ベイン、ESGはリスクか機会かで銀行の意見が分かれると報告

5月8日、世界的な経営コンサルティング・ファームであるベイン・アンド・カンパニーが発表した新しい調査によると、世界の銀行は、様々なESG要因を主にリスクと捉えるか、機会と捉えるかで意見が分かれている。多くの銀行は、今後数年間で様々なグリーン商品やサービスの発売を予定しているが、ほとんどの銀行は気候リスクを信用引受業務に統合することはまだしていない。

本調査において、ベインは国際クレジット・ポートフォリオ・マネージャー協会(IACPM)と共に55の銀行を調査し、回答者やIACPMの諮問委員会、リスク、財務、サステナビリティの上級幹部との対話も実施した。

環境移行と社会問題の両方について、銀行は「攻め」の姿勢と「守り」の姿勢に大別され、どちらも「攻め」の姿勢に若干傾いていることが調査から判明した。回答者は現在のESGの位置づけを同業他社より同等かやや上と評価する一方、将来のESGの位置づけを表明することで、同業他社よりかなり上と感じる者が非常に多かった。

リスクと機会に関する銀行の見解は、地域によって大きく異なっていた。欧州の銀行は環境移行要因に対してより強気であるように見え、約60%がこれらの問題を主に機会の源泉、あるいは「戦略的価値を創造する機会」と捉えているが、米州やアジア太平洋地域の回答者でこの見解を共有したのは3分の1以下だった。一方、米州の回答者の半数以上が社会的課題を主に機会と捉えているのに対し、欧州の回答者の多くは、社会的課題をよりリスク、あるいはリスクと機会のバランスと捉えている。

ESGの機会を活用するためにほとんどの銀行が行っている主要な取り組みの1つは、新しい金融商品とサービスの開発だ。すでに大多数の銀行がグリーンボンドとサステナビリティボンドを提供しており、それぞれ86%と84%にのぼっている。調査によると、今後3年以内にグリーン商業ビルローンを提供すると予想する銀行が73%、グリーン自動車ローンを65%、グリーン預金を57%と予想するなど、多くのグリーン商品が登場すると予想される。その他の分野では、カーボン商品、グリーン貯蓄口座、グリーンクレジットカードが大きく成長する予定。

本調査によると、銀行は気候などのESGリスクを様々な段階で自社の活動に組み込んでいる。65%の銀行が、気候に関するデータや指標を信用引受のプロセスにまだ組み込んでいないと回答しているが、約4分の1は1年以内に組み込む予定でいる。欧州の銀行がこの指標で最も進んでいる一方、米州の銀行では5行に1行程度しかこれらのリスクを統合していない。

また、報告書では、銀行がESGリスクを取り込んだり、機会に対処することを妨げていると思われるいくつかの問題点を検証している。主な要因としては、枠組みの方法論やツールの欠如やESG説明責任の役割を割り振る必要があることがあげられた。

報告書によると、銀行のESGへのアプローチに影響を与える重要な問題は、説明責任と決定権が明確でないことだ。調査結果によると、3分の2近くの銀行が、気候変動リスクの特定と対処に関する主要な説明責任者をまだ定義しておらず、すでにネット・ゼロを約束した銀行の約半数しか、パフォーマンスレビューに気候変動指標を組み込んでいないことが判明した。

【参照ページ】
(原文)Banks are divided on how to tackle ESG pressure from stakeholders and lack clarity on who’s responsible for managing climate risks
(日本語訳)ベイン、銀行がESGをリスクと機会の源泉と考えるかどうかで意見が分かれると報告

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