4月18日、IBMのビジネス・バリュー研究所(IBV)は、経営者の70%以上がESGを収益の柱と考え、消費者が購買や雇用の意思決定をする際に企業のサステナビリティ・パフォーマンスを重視する傾向が強まっていることを明らかにした。
IBVは、本調査「ESG ultimatum: Profit or perish」において、2万人以上の消費者を対象にした持続可能性と社会的責任に対する意識調査、および22の業界と34カ国の2500人の経営者を対象に行ったESG戦略、アプローチ、運用、期待できる利益、事業目的の考慮に関する調査の結果を分析した。また、本調査では、ESGの成熟度によって企業をセグメント化し、相対的なパフォーマンスを比較した。
経営者調査では、ESGが企業にとって最優先事項であることが示され、回答者の76%が事業戦略の中心であると答え、72%がESGをコストセンターとしてではなく、収益を上げるための手段としてアプローチし、45%がESGの取り組みによって収益性が向上すると予想している。
サステナビリティ関連の取り組みがもたらす効果は、「ESGリーダー」と呼ばれるセグメントで特に顕著で、これらの企業はESGの取り組みが収益性に「非常に大きな」影響を与えると報告する割合が52%高く、また顧客エンゲージメント(低ESG成熟企業よりも70%高い割合)、リスク管理(90%高い割合)、金融へのアクセス(85%高い割合)においてESG関連の改善を報告する割合が増えている。
本調査では、消費者の間でサステナビリティに強い関心があることも明らかになった。回答者の約3分の2は、環境の持続可能性と社会的責任(それぞれ68%、65%)を非常に重要視しており、これらの優先事項はすでに雇用や消費の意思決定に影響を与えていると報告している。また、70%以上が「環境の持続可能性や社会的責任を考慮した企業への就職を希望する」と答え、40%以上が「そのような企業で働くために低い給与を受け入れる」と回答し、過去1年間に転職した人の4分の1が「転職した」と報告している。さらに、半数以上が過去1年間に環境的に持続可能な製品や社会的責任のある製品に対してプレミアムを支払ったと回答している。
ESGが経営陣と消費者にとっての優先事項であることに変わりはないが、両グループとも、持続可能性に関する目標を達成するための主要な障害として、データ関連の課題を強調している。調査対象のエグゼクティブの41%は、ESGの課題を推進する上で、データが不十分であることを組織の最大の課題として挙げ、次いで規制の壁が39%であることを明らかにした。同様に、環境的に持続可能な購買決定を行うために十分なデータがあると答えた消費者は41%、雇用の決定に十分なデータがあると答えた消費者は37%にとどまり、持続可能な投資の決定を行うために十分なESG情報を持っていると答えた人は3分の1に過ぎなかった。
企業にとって、データの管理はESG報告やパフォーマンスへの取り組みにとって最大の障害となり、73%が手動データの過多を課題として挙げ、次いで70%がデータの統合や操作の難しさを、70%がデータ計算の透明性の低さを、69%がブランドや地域間のデータのマッピングの難しさを報告した。
また、レポートでは、ビジネスと消費者の認識のミスマッチが浮き彫りになった。経営者の74%が、ステークホルダーが組織のESG目標やパフォーマンスを理解していると思うと回答した一方で、消費者のわずか20%が、環境の持続可能性に関する企業の声明を信頼していると回答し、2021年の48%から大きく悪化している。
【参照ページ】
(原文)The ESG ultimatum: Profit or perish
(日本語訳)IBM調査:70%以上の企業がESGを収益の向上につながると考えていることを発表