4月18日、欧州議会は、炭素除去量を増やすための持続可能な解決策を開発する方法に関する欧州委員会の行動計画「持続可能な炭素循環」に関する決議を採択し、炭素除去が気候変動を抑制する可能性を認めながらも、2050年までに気候変動を中立化し2050年以降に純排出量を達成するというEU目標の追求において炭素除去に過度に依存することを警告した。
炭素の除去は、気候変動に対処するための重要な手段として浮上しているが、大気から炭素を回収して貯蔵する技術やソリューションのほとんどは、まだかなり初期段階にある。昨年発表されたIPCCの気候変動緩和研究によると、温暖化を1.5℃に抑えるシナリオでは、二酸化炭素の除去(CDR)方法が今後数十年にわたって年間数十億トンの除去量に拡大されるという。炭素除去の方法は、Direct Air Capture(DAC)プロジェクトなどの産業技術から自然の炭素吸収源まで様々である。
しかし、議会はEUの脱炭素化目標達成に向けた炭素除去の役割に言及しつつも、EUは常に迅速かつ予測可能な排出削減を優先しなければならないと強調している。
欧州委員会は2021年12月に「持続可能な炭素循環コミュニケーション」を採択し、炭素除去および長期貯蔵ソリューションを拡大する必要性を概説するとともに、土地管理者に検証済みの排出・除去データへのアクセスを提供することで土地セクターを利用してCO2を回収する炭素農業の拡大や、産業セクターが大気から炭素を除去し、持続的非化石源の炭素を使用する要件などのソリューション展開に対する課題への取り組み案を提示した。
さらに最近、欧州委員会は、炭素除去の定量化、モニタリング、検証を可能にすることを目的とした認証枠組みに関する提案を12月に採択した。同提案では、炭素除去の品質と比較可能性を確保するための一連の基準が詳述されており、気候変動に対する恩恵を正確に測定する必要性や、その活動が現在の実践に付加的であること、証明書が炭素貯蔵期間とリンクしていること、炭素除去活動が気候変動適応、循環経済、水・海洋資源、生物多様性といった持続可能性の目標を維持・貢献することなどが挙げられている。
EU議会は、欧州委員会の認証提案と、大気中の炭素を明確に除去する活動を特定するための枠組みを設ける意図に留意したと述べるとともに、この枠組みは炭素除去にインセンティブを与えるために使用されるべきであると強調した。
また、決議文は、大気から直接CO2を取り出して原料として使用したり、貯蔵と組み合わせることで永久的に除去するDACなどの技術について述べた。欧州議会は、炭素回収・貯蔵(CCS)および炭素回収・利用(CCU)ソリューションの役割にも言及し、現場で回収した炭素と大気から回収した炭素を区別して、回収した炭素を追跡できるシステムを確立するよう欧州委員会に要請している。
また、EUが2030年までに土地利用部門から3億1,000万トン(CO2換算)の炭素を除去するという目標を掲げる中で、農林業は重要な役割を果たすべきだと強調し、カーボンファーミングが農家のビジネスモデルの変革を助け、生物多様性も促進するアグロエコロジーや持続的アグロフォレストリーの実践への移行を目指す農家に報いる機会であることを指摘している。
【参照ページ】
(原文)Carbon removals: more efforts needed to achieve carbon neutrality, say MEPs
(日本語訳)EU議員、気候目標達成のための炭素除去量への過度依存に警告