3月23日、IFRS財団の会計基準設定機関である国際会計基準審議会(IASB)は、企業が財務諸表において気候関連リスクを開示する際の要求事項を変更する可能性を検討するための新しいプロジェクトを開始することを発表した。
IASBによると、本プロジェクトは、5年に1度開催される同基準の活動や作業計画に関する公開協議「アジェンダ協議」において、財務諸表における気候関連リスクの報告について強化すべきとの意見が寄せられたことを受けたものである。
現行の基準では、気候関連事項については明確に言及されていないが、気候関連事項の影響が投資家にとって重要である場合、企業は財務諸表で気候関連事項を考慮することが求められている。しかし、協議のフィードバックによると、回答者は、気候関連リスクはしばしば遠隔地と認識され、財務諸表において適切に考慮されていない可能性があること、また、投資家は気候関連リスクが資産及び負債の帳簿価額に与える影響についてより良い情報を必要としていることを報告している。
IASB議長のAndreas Barckowの声明では、気候関連リスクの報告に関してステークホルダーから寄せられた以下のような質問が紹介されている。
- 気候変動リスクの影響を受けると予想される企業が、なぜ財務諸表にその影響に関する情報を提供しないのか。
- ネット・ゼロを約束した企業が、なぜその約束の結果として負債を認識したり、資産価値を減損したりしないのか。
- 企業が長期的な不確実性を財務諸表における金額の測定にどのように反映させるべきかを検討する。
Barckow氏は、「プロジェクトは調査やアウトリーチを通じて、財務諸表における気候関連リスクの報告に関する利害関係者の懸念の性質や原因を探ることから始める」とし、気候関連リスクに関するIASB基準の策定を目指すのではなく、プロジェクトの成果として考えられるのは、基準のマイナーな修正や新しい適用指針といった狭い範囲にとどまるだろうと付け加えた。
また、IASBは、現在、持続可能性に関連する財務情報及び気候関連の開示に関する一般的な要求事項を網羅する最初の2つの報告基準を完成させる過程にある国際持続可能性基準審議会(ISSB)の作業を検討するとし、両審議会が要求する情報は、補完的なものになるだろうと付け加えている。
またIASBは、ISSBの作業を活用し、リスクだけでなく機会も対象とするか、気候以外の持続可能性に関連するリスクや機会を対象とするか、ISSB基準の適用によるシナリオ分析が資産・負債の測定にどのように反映されるかといった問題を検討できる可能性があると、Barckow氏は述べた。
【参照ページ】
(原文)Connectivity in practice: the IASB’s new project on Climate-related Risks in the Financial Statements
(日本語参考訳)IASB、財務諸表における気候関連開示の改善策を検討