11月11日、グローバルなプロフェッショナルサービス企業であるEYが発表した新しい調査によると、ほぼすべての投資家が企業のESG報告を意思決定プロセスに取り入れているが、4分の3以上の投資家が、企業は開示するサステナビリティデータを選別しており、規制当局が要求する場合にのみ有用な開示を行うと考えているようだ。
EYによると、本調査では、長期的なサステナビリティの創造と短期的なサステナビリティの創造、ESG報告などの分野において、企業と投資家の間に大きな断絶があること、そしていくつかの点で一致していることが浮き彫りになった。
本レポート「EY Global Corporate Reporting and Institutional Investor Survey」では、25カ国・14セクターの1,040人の企業のCFOおよびシニアファイナンスリーダーと、23カ国・銀行・資本市場、保険、富裕層・資産運用セグメントの320人の機関投資家に、サステナビリティに関する投資と報告に関する期待や目標を聞き取り調査している。
本調査の結果、ほぼすべての投資家(99%)が投資判断の一環として企業のESG開示を活用していること、また、その手法は過去数年で大きく成熟しており、「非財務情報開示の構造的・方法論的評価」を実施していると回答したのは74%だったが、2019年には32%にとどまることが分かった。
しかし、ESG報告への依存度が高まっているにもかかわらず、ほとんどの投資家は企業のサステナビリティ開示における大きなギャップを強調しており、約4分の3(73%)が「組織は、財務とESG開示の両方を包含したより充実した報告をほとんど作成していない」と回答し、76%が「企業は投資家に提供する情報を非常に選択しており、グリーンウォッシングに対する懸念が生じている」と回答している。
さらに、投資家10人のうち9人近く(88%)が、企業は規制上の要件で強制されない限り、意思決定に有用な限られたESG情報しか提供していないと回答している。
多くの企業が、自社のESG報告には改善の余地があると認めており、半数(54%)が、持続可能性活動に関する関連情報を投資家に提供していると同意し、41%が、現在のESG報告は基本的な保証基準さえ満たしていないと述べている。
本調査では、現在のサステナビリティ報告の有用性と有効性に課題をもたらす要因について、投資家と企業の意見がほぼ一致しており、両グループの回答の上位には、”情報に信頼を与える根拠と保証の欠如”、”ESG報告と主流の財務情報との断絶”、”企業がどのように長期価値を生み出すかに関する情報の欠如 “が挙げられている。
本報告書では、パフォーマンスに関するサステナビリティ報告への期待ギャップの要因として、大企業の回答者の半数以上(53%)が、サステナビリティへの長期的な投資は投資家からの短期的なプレッシャーによって阻害されていると答えていることが強調されている。しかし、投資家の78%が「企業は短期的に利益を減らしても、自社の事業に関連するESG課題に対応する投資を行うべき」と回答したのに対し、企業の財務責任者は55%しか同意していない。
EYの報告書によると、ESGに関する効果的な企業報告が不足していると認識されていること、長期的な価値創造と持続可能な成長に関する投資家と企業の期待の間にズレがあることが、企業が資本にアクセスする能力とサステナビリティ目標の達成を妨げる可能性があるという調査結果が示されている。
【参照ページ】
(原文)The EY Global Corporate Reporting and Institutional Investor Survey finds a significant reporting disconnect with investors on ESG disclosures.
(日本語訳)EY、機関投資家にサステナビリティに関する投資と報告に関する期待や目標を調査