3月30日、気候変動に焦点を当てた投資家向けイニシアティブ「Climate Action 100+」は、世界最大の温室効果ガス(GHG)排出企業の排出削減目標・脱炭素戦略・気候情報開示の実践を検証する「Net Zero Company Benchmark assessments」の最新ラウンドの結果を発表した。本検証では、対象企業の気候変動への取り組みは改善されているものの、世界的な気候変動目標に沿った有意義な戦略を明確にし、実行するには大きなギャップが残っていることを指摘した。
Climate Action 100+は、世界最大の温室効果ガス排出企業を対象に気候変動に対する必要な行動を促進し、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるためにネット・ゼロに向けた事業戦略の調整を行うイニシアティブで、68兆ドルの資産を持つ700人の投資家が参加している。
Net Zero Company Benchmarkは、温室効果ガス排出量の削減・ガバナンスの改善・気候関連の財務情報開示の強化という3つのハイレベルな取り組み目標に対して、個々のフォーカス企業のパフォーマンスを投資家が詳細に比較評価できるようにするために、昨年導入されたものだ。
本ベンチマークは、企業の採点やランキングではなく、2050年またはそれ以前のネット・ゼロの野心の設定、長期・中期・短期の温室効果ガス削減目標、脱炭素戦略、資本配分の調整、気候政策への関与、気候ガバナンス、Just Transition(現在ベータ版)、TCFD開示など、一連の10の主要指標と指標に対する個々の企業の進捗を評価する。
本評価では、過去1年間に気候変動に関するコミットメントを行った企業の割合が増加し、69%の企業が2050年までに排出量の全部または一部についてネット・ゼロ・エミッションを達成することを誓約し、昨年の52%から増加したことが分かった。しかし、このような勢いにもかかわらず、Scope3を含むすべてのマテリアル・エミッションをカバーする企業のコミットメントは42%に過ぎないことが報告されている。また、目標を裏付ける強固な脱炭素化戦略を提示した企業や、IEAの1.5℃シナリオに沿った中期目標を設定した企業は17%にとどまった。
セクター別の結果では、ほとんどの電気事業者が地球温暖化を2℃未満に抑えることと整合性のある石炭の段階的な廃止計画を持っていないこと、石油・ガスフォーカス企業のほぼ3分の2が、2℃未満シナリオと整合性のない新規探査・生産プロジェクトを依然として承認していることが示された。さらに、鉄鋼・セメント・航空会社では、地球温暖化を2℃未満に抑えることに見合った排出強度を有していると評価された企業は極めて少数であった。
【参照ページ】
(原文)CLIMATE ACTION 100+ NET ZERO COMPANY BENCHMARK SHOWS AN INCREASE IN COMPANY NET ZERO COMMITMENTS, BUT MUCH MORE URGENT ACTION IS NEEDED TO ALIGN WITH A 1.5°C FUTURE
(日本語訳)Climate Action 100+ 、企業の気候変動への取り組みの大きなギャップを指摘