欧州委員会、温室効果ガス排出源に対処する一連の立法案を発表。建物の脱炭素化など本格着手

欧州委員会、温室効果ガス排出源に対処する一連の立法案を発表。建物の脱炭素化など本格着手

欧州委員会は2日、EU加盟国全体の主要な温室効果ガス排出源に対処することを目的とした一連の立法案を発表した。その中には、EUの建物の脱炭素化、低炭素ガスの導入促進、メタン排出量の削減のための規則・規制案が含まれている。

欧州委員会によると、今回の提案は、欧州委員会の「Fit for 55」ロードマップで想定されている、2030年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を少なくとも55%削減し、2050年までに気候ニュートラルを実現するという気候変動に関する目標の達成を可能にすることを目的としている。

建物は、世界の温室効果ガス(GHG)の主要な排出源であると同時に、その長期的な性質から代替が最も困難なものの一つだ。欧州委員会によると、建物はEUで消費されるエネルギーの40%を占め、エネルギー関連のGHG排出量の36%を占めている。家庭のエネルギー消費の80%は、暖房、冷房、給湯に使われている。

新提案では、2030年時点でのすべての新規建築物をゼロエミッションにすることを目標としており、電力にはできるだけ再生可能エネルギーを使用し、化石燃料からの炭素排出を行わないことが求められる。また既存の建物については、エネルギー性能の最低基準を提案しており、各加盟国で最も性能の悪い15%の建物を、非住宅では2027年までに、住宅では2030年までに改良することを求めており、2040年までに国の建物の冷暖房に使用する化石燃料を段階的に廃止することを想定している。

エネルギーに関する提案は、水素やバイオメタンなどの低炭素ガスの導入を促進し、エネルギーミックスを化石由来の天然ガスから移行させることを目的としている。提案には、再生可能ガスや低炭素ガスが既存のガスグリッドにアクセスしやすくするために、関税を撤廃または引き下げることや、低炭素ガスの認証システムを確立することが含まれており、加盟国がエネルギーミックスにおけるガスの位置づけを決定する際に、異なるガスのGHG排出量を評価できるようにする。さらに、価格比較ツール、透明性の高い請求情報、データやスマートテクノロジーを活用することで、消費者が自らの消費において化石燃料ではなく再生可能ガスや低炭素ガスを選択できるようにすることを想定している。

メタンに関する提案としては、石油・ガス・石炭の各部門に対し、メタン排出量の測定・報告・検証を義務付けるとともに、メタンガス漏れの検知・修理、ガス抜き・フレア発生の抑制などのルールを定め、さらに輸入石油・ガス・石炭からのメタン排出量の透明性を確保するためのモニタリングツールを提案している。

さらに、欧州委員会は、大気中の炭素の除去と貯蔵に関する提案を開始した。この規則では、農家や林業家などの土地管理者が、炭素貯留につながる改善された土地管理を行った場合に報奨金を支給するカーボンファーミングの取り組みを推進するとともに、沿岸湿地の自然を利用した解決策や再生型水産養殖などのブルーカーボンの取り組みの発展にも力を入れている。欧州委員会は、2022年末までに、炭素算定やモニタリングの要件に関する規則を含む、炭素除去の認証に関するEU規制の枠組みを提案すると述べている。

【参照ページ】Commission proposes new EU framework to decarbonise gas markets, promote hydrogen and reduce methane emissions

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