Science Based Targets initiative(SBTi)は、金融機関のネット・ゼロ基準を策定するプロセスを開始し、「Net-Zero Foundations for Financial Institutions Draft」の公開を発表した。
2015年設立のSBTiは、CDP、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)の協力のもと、科学的根拠に基づく環境目標設定を企業の標準的な慣行として確立することを目的として設立された。
SBTiは先月、ネット・ゼロ・エミッションの達成に向けた企業の取り組みを評価・認証するための「ネット・ゼロ・スタンダード」を発表した。今回の発表でSBTiは、企業のネット・ゼロ・スタンダードに対応する金融セクターの開発を目指していることを明らかにした。このプロセスの主な目的は、2050年までに経済全体のネット・ゼロ・エミッションを達成するために、金融機関が資本の動員における影響力と独自の役割を最大限に活用できるよう、基準を定義することだ。
【国際】SBTi、企業のネット・ゼロ目標を評価・認証する規格を発表
金融のための気候変動基準を策定するプロセスは、ネット・ゼロの目標を支援するために、金融サービス部門の企業によるコミットメントが急増している中で行われる。先週開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議において、GFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)は、世界のネット・ゼロ目標に賛同する金融セクター企業が代表する資本が、世界の金融資産の約40%に相当する130兆ドル以上に達したことを明らかにした。
【参考記事】ネット・ゼロを目指す金融連合GFANZ、COP26にて進捗を報告。参画機関の資産は約1.5京円に
SBTiによると、ネット・ゼロの目標設定は金融機関にとって一般的になりつつあるが、その定義やコミットメントに含まれる活動には大きな違いがあり、目標の評価や、現実世界での影響の比較・測定が困難になっている。例えば、目標の対象となる融資や投資活動の種類、エミッションフットプリントの計算における投資先企業のスコープ3の排出量の算入・除外、考慮される緩和戦略の種類などの違いがある。
SBTiは、ドラフトペーパーの中で、次のように述べている。
「これまでの金融機関のネット・ゼロの状況を検証した結果、対象となる金融サービスの範囲や、金融機関がどのようにして目標を達成しようとしているかなど、さまざまな面でアプローチが異なっていることがわかりました。金融機関は、さまざまな戦略を組み合わせてポートフォリオの脱炭素化を図り、再生可能エネルギーや二酸化炭素除去技術などの新しい気候変動対策に投資しています。しかし、共通の理解がなければ、今日のネット・ゼロ目標設定の状況は、利害関係者が目標を比較し、今世紀の地球温暖化を1.5℃に抑えることに合わせて、2050年までに世界のネット・ゼロ経済を達成するために、金融機関がとっている行動が十分であるかどうかを評価することを困難にしています。」
SBTiは、金融機関におけるネット・ゼロの定義について、融資された排出量に基づくネット・ゼロ請求、個々の資産がネット・ゼロの状態を達成するようなポートフォリオの調整、脱炭素化活動や気候変動対策への融資における金融機関の役割を考慮したより広範な「ポートフォリオ貢献」など、3つの大まかなアプローチ(相互に排他的ではない)を挙げている。
本基準は12月17日まで公開され、2022年第1四半期に最終ドラフトが公表され、最終基準は2023年初頭の発表を予定している。
【参照ページ】
(原文)SBTi Launches New Foundations of Net-Zero for Financial Institutions Draft for Public Consultation
(日本語訳)SBTi、金融のネット・ゼロ・スタンダードを目指す