7月5日、英国の規制当局である金融行動監視機構(FCA)の要請で結成された業界団体であるESGデータ・格付ワーキンググループ(DRWG)は、ESG格付とデータ・プロバイダーのための自主的な行動規範の草案を発表した。DRWGはまた、2023年10月5日まで本行動規範草案に関するコンサルテーションを実施する。
本行動規範の主な目的は、投資家にとって商品と事業体の両レベルで情報の入手可能性と質を向上させること、市場の健全性を高めるために透明性、ガバナンス、システムと統制を改善すること、ESGデータと格付け分野の競争を改善するために商品とプロバイダーの比較可能性を高めること、などである。
投資家がESGを考慮した投資を行うようになるにつれ、ESG格付けやデータのプロバイダーに対する需要が急増しており、規制の必要性が高まっている。
例えば、EU委員会は6月、ESG格付けプロバイダーに対し、厳格で客観的な手法の使用、利益相反の防止、手法やモデル、主要な格付け前提条件の透明性向上などの要件を盛り込み、品質と信頼性を確保するため、欧州市場規制当局であるESMAによる監督を求める提案を発表した。
2021年11月、証券規制当局の基準設定機関であるIOSCOは、ESG格付けやデータ分野の透明性向上に注力し、規制当局による監視を開始するよう規制当局に促した。IOSCOはまた、潜在的な利益相反の特定と開示をプロバイダーに求め、プロバイダーが使用するデータと方法論を検討するなど、規制当局への一連の勧告を行った。
FCAは2022年11月にDRWGの設立を発表し、IOSCOの勧告や他の法域の動向も考慮しながら、ESGデータや格付けのプロバイダーの行動規範を策定し、国際的に整合性のあるものとし、一貫したグローバルスタンダードの策定を促すことを任務としている。
提案されている行動規範は、ESG格付けやデータ商品のプロバイダーが適切なガバナンスと監視体制を 確保するための「グッドガバナンス」、質の高いESG格付けやデータ商品を確保するための文書化された方針と手 続きの採用・実施をプロバイダーに求める「質の確保」、利害の対立、ESG格付けやデータ商品の基礎となる方法論やプロセ スをカバーする「透明性」、非公開情報の管理と保護に関する「機密性」、評価プロセスから期待されること の可視化を含む「エンゲージメント」の6つの主要原則を中心に構築されている。
FCAは、国際資本市場協会(ICMA)と国際規制戦略グループ(IRSG)を事務局に任命した。DRWGはM&G、ムーディーズ、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)、スローター・アンド・メイが共同議長を務め、投資家、ESGデータ・格付プロバイダー、格付機関も参加している。
【参照ページ】
Draft Voluntary Code of Conduct for ESG Ratings and Data Product Providers