金融庁、ESG評価機関に係る行動規範の策定を提言

7月12日、金融庁は「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書」を公表した。報告書は、ESG・データに係る現況、ESG評価・データが適切に利用されるための課題、今後見込まれる展開等についての議論をまとめ、ESG評価機関向けの行動規範の策定を提言している。

サステナブルファイナンスの急速な拡大を受けて、企業のESG取組状況について情報を収集・集約し、評価を行う「ESG評価・データ提供機関」の影響力が大きくなっている。このような状況下で、評価の透明性と公平性の確保、潜在的な利益相反、人材の確保、企業の負担感といった課題が指摘されている。

金融庁は「ESG評価・データ提供機関に係る専門分科会」において、企業のESGの取組みを評価するESG評価機関について評価の透明性・公平性を確保するための「行動規範」の案をとりまとめた。併せて、評価を利用する機関投資家や、評価を受ける企業への提言とともに報告書として公表した。提言は、6つの原則で構成されている。

原則1(品質の確保):ESG評価・データ提供機関は、提供するESG評価・データの品質を確保するべきであり、このために必要な基本的手続き等を定めるべきである。
原則2(人材の育成):ESG評価・データ提供機関は、自らが提供する評価・データ提供サービスの品質を確保するために必要な専門人材等を確保し、また、自社において専門的能力の育成等を図るべきである。
原則3(独立性の確保・利益相反の管理):ESG評価・データ提供機関は、独立して意思決定を行い、自らの組織・オーナーシップ、事業、投資や資金調達、その他役職員の報酬等から生じ得る利益相反に適切に対処できるよう実効的な方針を定めるべきである。利益相反については、自ら、業務の独立性・客観性・中立性を損なう可能性のある業務・場面を特定し、潜在的な利益相反を回避し、またはリスクを適切に管理・提言するべきである。
原則4(透明性の確保):ESG評価・データ提供機関は、透明性の確保を本質的かつ優先的な課題と認識して、評価等の目的・考え方・基本的方法論等、サービス提供にあたっての哲学を一般に明らかにするべきである。また、提供するサービスの策定方法・プロセス等について、十分な開示を行うべきである。
原則5(守秘義務):ESG評価・データ提供機関は、業務に際して非公開情報を取得する場合には、これを適切に保護するための方針・手続きを定めるべきである。
原則6(企業とのコミュニケーション):ESG評価・データ提供機関は、企業からの情報収集が評価機関・企業双方にとって効率的となり、また必要な情報が十分に得られるよう、工夫・改善すべきである。評価等の対象企業から開示される評価等の情報源に重要または合理的な問題提起があった場合には、ESG評価・データ提供機関は、これに適切に対処すべきである。

【参照ページ】
「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書」の公表について

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