ECIU、世界の大企業のネット・ゼロ目標の誓約に疑問を投げかける報告書を発表

6月13日、英シンクタンクEnergy and Climate Intelligence Unit(ECIU)は国、自治体、企業における・目標設定の現状と傾向を評価した報告書「ネット・ゼロ・ストックテイク2022」を発表した。本報告書によると、世界の大企業には「大きな信頼性のギャップ」があることが判明した。

フォーブス誌に掲載された2000社の大企業のうち、約半数がまだネット・ゼロ達成計画を発表していない。ネット・ゼロとは、温室効果ガスの排出を、生産量の大幅削減と大気中の二酸化炭素を吸収する方法によって否定する時点のことだ。Net Zero Trackerが年次報告書で明らかにしたところによると、ネット・ゼロ目標を掲げる702社のうち、3分の2はその目標を達成するための計画を明確にしていない。

Net Zero Trackerは、英国のEnergy and Climate Intelligence Unit(ECIU)とオックスフォード大学が共同で運営しており、約200カ国の公開データと、化石燃料関連企業を含む大手上場企業のデータを評価するものである。

ネット・ゼロ目標を掲げる企業の多くは、2050年以前の暫定的な排出量目標を設定していない。科学者が言うように、世界が今後8年間で排出量を半減させるためには、本目標は「受け入れがたいほど低い」、と報告書は述べている。

また、カーボンオフセット(他の場所で削減した排出量のクレジットを購入すること)も、企業戦略の中で大きく取り上げられている。規制がないことへの懸念はあるものの、ネット・ゼロを目標とするフォーブス2000企業の40%近くがオフセットを利用する予定だ。

国連は昨年のグラスゴーでの気候サミットで、民間企業向けのネットゼロ基準を作成し、コミットメントを分析するための専門家グループを設置した。欧州連合(EU)も11月の採択を目指して、ネット・ゼロ報告基準の草案を作成している最中だ。現在の草案では、企業がカーボンオフセットをネット・ゼロに算入することは禁じられている。

【参考ページ】
(原文)Net Zero Stocktake 2022

関連記事

“導入事例へのリンク"

おすすめ記事

  1. 2024-4-16

    SSBJ公開草案の重要ポイント解説:今後の気候変動の情報開示はどう動くか

    2024年3月29日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が国内のサステナビリティ開示基準の草案…
  2. 2024-4-9

    SBTN(Science-Based Targets for Nature)とは。企業のネイチャーポジティブ経営を実現する目標設定の方法論を解説。

    TNFDのフレームワークが公開され、先進企業ではフレームワークに基づく情報開示が進みつつある(20…
  3. 2024-4-2

    【さくっと読める】TNFDの開示とは。重要ポイントを抽出。

    2023年9月、TNFDのフレームワークが完成し公開された。2023年時点でTNFDに基づく開示を…

ピックアップ記事

  1. 2024-5-8

    IBM、ESGデータプラットフォームにCSRD対応機能を追加

    4月30日、IBMは、ESGデータの収集、分析、報告プ​​ラットフォーム「IBM Envizi」の…
  2. 2024-5-8

    IFRS、EFRAG、ISSB/CSRD報告基準に双方に対応する企業向けガイダンスを発行

    5月2日、IFRS財団と欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、ESRS-ISSB基準の相互に共…
  3. 2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
ページ上部へ戻る