4月20日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は「ESG投資の分散投資効果とポートフォリオ効率性に関する共同研究」を発表した。より適切かつ効果的なESGの取り組みを可能にする目的で、オーストラリア国立大学の沖本竜義准教授と共同で実施した。
検証は、ESGの分散投資効果の定量化と時間的な変遷の解明、ESG投資によるポートフォリオの効率性が向上する状況の特定、ESG投資の有効性に内在する時間的な構造変化の解明、ESGスコアと企業の特性や行動の関係性に関する定量的な分析、国別の差異と要因の分析、という5つの観点から行った。
GPIFが行った4つの研究プロジェクトとその成果は以下のようである。
1.ESG指数の分散投資効果とポートフォリオ効率性への寄与
- 女性活躍指数(WIN)は、TOPIXと比較して恒常的にボラティリティ・下方リスクが低い。また、ESGセレクト・リーダーズ指数の下方リスク低下効果も観察できる
- ESG指数と伝統的資産の残差の相関は、年が進むほど低下傾向
- ESG指数を組み込むことによって、ポートフォリオ効率性の改善が見込まれる。また、最小分散ポートフォリオのリターン及びリスク、最適ポートフォリオのシャープレシオが改善
2.女性活躍指数(WIN)のパフォーマンスと市場状態
- WINのαは、過去5か月間の株式市場のパフォーマンスが低かった翌月に高くなる傾向がある
- 日本株式に対してリスクを軽減し、分散投資効果を高める可能性
- 市場のパフォーマンスが悪くボラティリティが小さいときに、MSCI Japan IMIやSLIより良くなる
3.ESG スコアの企業価値ならびに超過投資への影響
- ESG投資への認知が高まるにつれて、ESGスコアが企業価値に与える正の影響が強まる傾向
- 一般消費財、生活必需品、ヘルスケア、資本財、情報技術、公益事業などにおいて、ESGスコアの企業価値への影響が大きい
- 企業の超過投資とESGスコアの間に明確な関係は観察されない
- ESGスコアをE・S・Gの各スコアに分解して同様の分析を行っても、ESGスコアが超過投資を誘発させるという明確な関係は観察されなかった
4.ESG スコアの社債の信用スプレッドへの影響
- 高ESG評価は信用スプレッドを有意に低下させる
- 高ESG評価は、信用力が低い企業に対してより大きな信用スプレッド低下効果をもつ
- 高ESG評価による信用スプレッド低下効果は、ESG投資への認識が高まるにつれて増大
- ESGの項目別では、「人権(S)」や「統治管理(G)」の信用スプレッド低下効果が年々大きくなっている。(特に、信用力が低い企業)
【参照ページ】
(原文)ESG投資の分散投資効果とポートフォリオ効率性に関する共同研究