10月27日、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)は、G20インプットペーパー「 Recommendations for credible net-zero finance commitments」を発表した。UNEP FIは、科学的根拠に基づく信頼性、透明性、比較可能性のある1.5℃のコミットメントとはどのようなものか、またそれが実体経済の移行にとってどのような意味を持つのかについて、初めてハイレベルな枠組みを示している。ネット・ゼロを定義することで、金融機関がネット・ゼロ目標の設定と実施に一貫性を持たせることが可能になる。
UNEP FIは、金融機関に対し、科学的根拠に基づくネット・ゼロの定義(今後30年間の累積排出量が、気候変動に関する政府間パネルが設定した2050年までに必要な排出量予算内に収まること)を用いること、また、セクター・パスウェイを用いて、産業セクターごとに異なる企業の進捗状況を追跡することを呼びかけている。これにより、金融機関は、1.5℃のパスウェイとの整合性を全体的に把握することができ、自社やポートフォリオ内の実在する企業が2050年までにネット・ゼロに到達するための軌道に乗っているかどうかを確認することができる。
今回の提言は、Science Based Targets initiative(SBTi)、国連グローバル・コンパクト、世界自然保護基金(WWF)などが検討し、貢献している。
11の提言は下記の内容等が含まれる。
・科学的根拠に基づく、ノー/ロー・オーバーシュートの1.5℃シナリオの目標との整合性とること
・できるだけ早く整合性をとり、近い将来(理想的には5年後)の目標を設定すること
・化石燃料の新規開発に対する融資を停止すること
・温室効果ガスの排出量とその配分に関する透明性を確立し、実体経済への影響を考慮すること
・適切な排出範囲を設定し、可能な限り早期に完全にカバーするよう努め、データによっては金融機関がスコープ3にも対応できるようにすること
・移行における将来の役割を担う新興技術の活用も含めた移行のための資金調達
上記の提言は、今年のG20におけるG20持続可能な金融ワーキンググループ(SFWG)のインプットペーパーの一部としてまとめられたものである。このペーパーは、財務大臣および中央銀行総裁によって承認されたG20持続可能な金融ロードマップを作成するためのインプットとなった。このロードマップは、2030アジェンダとパリ協定の目標を支える持続可能な金融を拡大するための主要な優先事項を示し、今後数年間でこれらの優先事項の達成を促進するためにG20が取るべき行動をリストアップしている。
【参照ページ】
(原文)UNEP FI DELIVERS G20 INPUT PAPER WITH RECOMMENDATIONS FOR CREDIBLE NET-ZERO FINANCE COMMITMENTS
(日本語訳)UNEP FI、信頼できるネット・ゼロ・ファイナンスの約束を求める提言をまとめたG20インプット・ペーパーを提出