米国金融安定監督評議会(Financial Stability Oversight Council: FSOC)は、気候変動が米国の金融安定性に対する新たな脅威であり、かつ増大していることを指摘した新しい報告書を発表した。気候データの開発や企業の情報開示の強化など、この脅威に対処するための行動を連邦政府機関に求めている。
FSOCは、米国の金融安定性に対するリスクを特定し、新たな脅威に対応することを任務と
しており、財務長官が議長を務め、連邦の金融規制当局、州の規制当局、保険の専門家が参加している。メンバーには、連邦準備制度理事会(FRB)、米国証券取引委員会(SEC)、連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation)、連邦住宅金融庁(Federal Housing Finance Agency)などのトップが名を連ねている。
このような新たなリスクに対処するために、審議会は政府機関に対してシナリオ分析を用いて金融安定性に対する気候関連の財務リスクを評価すること、これらのリスクを考慮した新たな規制の必要性を評価すること、投資家がより多くの情報に基づいた意思決定を行い、規制当局や金融機関がリスクを評価・管理する能力を得るために、気候関連の情報開示を強化することなどを主な提言として挙げている。また、気候関連データを充実させ、規制当局や民間企業がより適切にリスクを測定できるようにすることや、気候関連の金融リスクを確実に特定・管理するためのキャパシティと専門知識を構築することも求めている。
本報告書は、5月にバイデン大統領が署名した大統領令を受けたもので、連邦政府が気候危機に対処し、気候変動による経済的リスクを軽減することを目的としている。この大統領令では、金融規制当局に対し、気候関連の金融リスクを評価するよう求めており、具体的には、ジャネット・イエレン財務長官に対し、気候関連の情報開示を改善する計画を検討し、気候関連の金融リスクを規制・監督上の実務に組み込むことを奨励している。
米国では、企業の気候変動に関する情報開示について、より包括的かつ義務化されたシステムに近づきつつある。2021年2月、米国証券取引委員会(SEC)は、気候変動リスクに関する公開企業の開示義務についてのガイダンスの見直しに着手した。その理由として、投資家からは、重要かつ包括的で一貫性のある情報を求める声が高まっていることを挙げている。7月、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長は、企業による気候変動リスク報告の義務化について、今年末までに規則案を策定することを目指すと発表した。
【参照ページ】
(原文)Financial Stability Oversight Council Identifies Climate Change as an Emerging and Increasing Threat to Financial Stability
(日本語訳)金融安定化監視評議会、気候変動を金融安定化への新たな脅威、そして増大する脅威と認識