【ESG 企業開示事例㉑】ROESGスコアは日本勢1位!サプライチェーンも意識する花王のESG・サステナビリティ経営

こんにちは!ESG Journal Japan編集部です!

本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。

第21弾として、今回は花王株式会社を取り上げます。花王は独自のESG戦略である「Kirei Lifestyle Plan」を策定し実行しています。CDPの評価では、日本企業で初めて「トリプルA(気候変動、水、森林の全3分野で最高評価)」を獲得した企業であり、GPIF、環境省や他外部評価機関からも常にトップクラスの評価を得続けています。本コラムではそんな花王の取り組みについて掘り下げていきたいと思います。


花王株式会社

トイレタリー国内首位で、傘下にカネボウ化粧品をもつ。「メリーズ」「アタック」「ビオレ」の3ブランドを、それぞれ売上高1,000億円規模のメガブランドに育てる方針。コンシューマープロダクツでは、アジアでの事業拡大と欧米での高利益化に注力

出所:SPEEDA、会社公表資料

CSR/ESGにおける対外的評価

環境省 ESGファイナンス・アワード・ジャパン(2019):金賞

受賞理由

これまで環境課題に真摯に取り組み、課題の特定やKPIの設定、PDCAの見える化を進めてきた実績に加えて、近年ESGガバナンスを明確にし、経営の長期ビジョンや経営戦略にESG活動を有機的に統合し、イノベーションによる環境面での社会課題の解決を企業価値向上の軸の一つとして明確に定め実践してきたこと、またマネジメント層のコミットメント・発信力および優れた情報開示も高く評価される。経営者インタビューでは、ESGポリシーを事
業活動の中に落とし込むべく、着実に取り組みを進めていることが理解できた。目標達成において着実に成果を出し、グローバルなイニシアティブをリードすることなどを通じて世界での模範企業となることを期待したい

出所:環境省

またGPIFの運用機関が選ぶ優れた統合報告書、コーポレート・ガバナンス報告書においても多くの運用機関から評価を受けており、特に後者のガバナンス面においては7評価機関から評価を受けるなど、国内でもトップの評価を得ています。

GPIFの運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」:4運用機関選定
GPIFの運用機関が選ぶ「改善度の高い統合報告書」:1運用機関選定
優れたコーポレート・ガバナンス報告書2019(GPIF調査):7運用機関が選定

「優れた統合報告書」受賞理由

・ESG ビジョンで重点取組みテーマと 2030 年の目標値をしっかりと掲げている。ESG 経営を推進する中、社会価値と経済価値の同期化を図り、企業価値向上に向けたよい報告書に仕上げている。
・バリューチェーン毎に ESG が考慮されており、企業文化として根付いていることが窺える内容。
・中期・長期目標を財務・非財務の両面から丁寧に説明。ESG 経営について同業他社をリードする形でパーム油のサプライチェーンマネージメントやプラスチック削減の方針などを打ち出している点を評価。

「優れたコーポレート・ガバナンス報告(2019)」受賞理由

・「コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由」において、【原則 3-2-2 外部会計監査人と社外取締役との十分な連携の確保】および【原則 4-8-1 独立社外取締役のみの定期的な情報交換】に関して、コンプライしない理由ではなく、同社における実質的に当該内容を担保するような取り組みが具体的に紹介されており、単に全
項目をコンプライすることがコーポレートガバナンス・コードの目的ではなく、エクスプレインによってガバナンスの実効性を示すことも重要であるということを示す一例である。
・社長を含む取締役の選解任について社外取締役・社外監査役のみで構成される取締役選任審査委員会で審議し取締役会に意見具申する仕組みが明記されている。
・別紙の更新履歴一覧は同社のガバナンス改善に対する取組の経緯を把握する上で非常に有効。

出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」(2021/2/24)
GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」」(2019/2/27)

東洋経済CSRランキング:5位
出所:「CSR企業白書2021」(東洋経済新報社、2021年4月)

花王のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」

花王は独自のESG戦略である「Kirei Life Plan」を2019年4月22日に発表しました。

「Kirei Lifestyle Plan」は、「快適な暮らしを自分らしく送るために」、「思いやりのある選択を社会のために」、「よりすこやかな地球のために」という3つの柱で構成されています。また、それぞれの柱に対し、2030年までのコミットメントが掲げられ、それらを達成するためのアクションも定められています。

画像1

出所:花王サステナビリティデータブック2019

また、19の重点取り組みテーマの設定もしています。2021年5月24日には「Kirei Life Plan」の進捗状況を「花王サステナビリティ データブック 「Kirei Lifestyle Plan Progress Report 2021」において公開しました。

独自のESG推進体制とガバナンス

花王はより柔軟で強靭なESG 活動を実現するため、ESG委員会、ESGアドバイザリーボード、ESG推進会議、ESG タスクフォースを設け、独自のESG 推進体制を構築しています。

ESG委員会は、取締役会の下にESG 戦略に関する活動の方向性を議論し、決定する機関です。ESG外部アドバイザリーボードは、社外の視点を反映させるために外部有識者で構成されています。

またESG推進会議は事業部門、リージョン、機能部門、コーポレート部門の責任者で構成することで、ESG課題について迅速に経営判断を行ない、各部門がESG活動を進めることができる体制を構築しており、ESGタスクフォースは注力テーマについて活動を提案する役割を担うことで各部門、活動の推進に貢献しています。

画像2

出所:花王 Kirei Lifestyle Plan Progress Report 2021

これらの部門統括として欧米スキンケア・ヘアケア事業部長を務めていたデイブ・マンツ氏が就任しています。花王はこのESG 推進体制により、グローバルのESG 活動状況を把握するとともに、事業や社会へのインパクトを基に戦略や投資等の経営判断を行なっています。

本体制が発足した2018年から2年経過して以来、ESG 委員会とESG 推進会議の連動、19の重点取り組みテーマの主管部門と各部門の連携、各部門内のグローバル運営を含めたESG活動の組み込みを進めています。

「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」の策定


花王の取り組みで最新のものとして挙げられるのは、2021年8月24日に発表された「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」の策定です。

花王、調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドラインを策定

本ガイドラインでは、取引先と共に、サプライチェーン全体のトレーサビリティ確保や、資源保護・環境保全や安全、人権などの社会的課題の解決に貢献し、その一環として、サプライチェーンが抱える社会課題上のリスクの特定や、取引先への第三者監査等を実施していくとしています。既存の「調達先ガイドライン」の周知を図り、第三者監査を含めて遵守状況を確認することが本ガイドラインのポイントです。これは「Kirei Lifestyle Plan」における19の重点取り組みテーマの一つである「責任ある原材料調達」の一環でもあります。

サプライチェーンに意識を向けた取り組みは世界的にも必須になってきているといえます。企業が事業活動に伴う人権侵害リスクを把握し予防や軽減策を講じる「人権デューデリジェンス」に注目が集まっている今、花王はサプライチェーン全体でのESGに対する取組みに一早く対応しています。

ROESGスコアは日本勢で1位

19年に日本経済新聞社が実施したROESG調査では日本勢は花王が首位でした(全体では56位)。花王はROEが19.1%と日本企業の平均を大きく上回っているだけではなく、ESGスコアにおいても各種評価機関から非常に高い評価を得ているからといえます。

ROESG世界トップ100社、消費者向けが上位に

花王の外部からの評価

花王 | 外部評価

ROESGの算出方法など、詳細について気になる方は以下の記事で全体像をまとめていますので是非ご覧ください。

ROEとESGの両立が日本企業の生きる道?今話題のROESG経営とは


全社員の評価にESG目標を含めたOKRを導入

花王は、新中期経営計画「K25」の目的の一つに、「社員活力の最大化」を掲げています。この目的の達成に向けて、今年から「OKR(Objective Key Results)」と呼ぶ人材活性化制度の運用を始めました。

花王はOKRにおいて「事業への貢献」「ESG」「部門連携、組織活性化、自分や部署のありたい姿」の3項目について、「目標」とその達成度合いを測る「主要な結果」を設定します。全体の30%がESGへの貢献目標となっており、社員が日々の仕事の中で自然とESGを意識するような仕組みづくりをしています。

最後に

花王のサステナビリティ・ESGへの取り組みをまとめましたがいかがでしょうか。「Kirei Life Plan」というESG戦略の下、組織体制から社員の目標設定に至るまで徹底的にESG意識を浸透させ、日本でもトップクラスの評価を得ている花王の取り組みには学ぶべき所が数多くあります。今後はサプライチェーン・人権に周りにもさらに積極的に取り組んでいくとみられており、花王のESG経営は要注目です。

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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。

それではまた!

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