先週末、サウジアラビアは2060年までに温室効果ガスの排出をゼロにするという国家目標と、メタンガスの排出を削減する世界的な取り組みに参加する計画を発表した。この目標は、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議の数日前に開催された気候変動フォーラム「Saudi Green Initiative」でのムハンマド・ビン・サルマン皇太子のスピーチで発表された。サウジアラビアは世界最大の原油輸出国であり、OPECによると石油部門は同国のGDPの約半分を占めている。
今回のフォーラムでは、世界最大の石油会社である国有企業サウジアラムコも、2050年までに事業活動による排出量をネット・ゼロにするという野望を発表した。
ムハンマド皇太子は、国が計画している取り組みにより、2030年までに年間2億7,800万トンの二酸化炭素排出量を削減し、約1,900億ドルの投資を行うと述べた。また、サウジアラビアは、2030年までにメタン排出量を30%削減することを目的とした「Global Methane Pledge」に参加することも発表した。
このサウジアラビアの発表には、称賛と懐疑が入り混じっている。COP26のホスト国である英国のボリス・ジョンソン首相は、「2060年までに排出量をネット・ゼロにするというサウジアラビアの画期的な誓約は、大きな前進だ」と述べ、COP26議長のアロク・シャーマも、目標を歓迎しつつも、同国の計画の詳細を楽しみにしていると述べた。
その他、計画はいくつかの点で世界的な野心に及ばないと指摘した。サウジアラビアのネット・ゼロ目標は、ロシアや中国の目標とは一致しているものの、世界の目標である2050年に比べて10年遅れている。またサウジアラムコの目標には、事業活動に伴う排出量のみが含まれており、気候変動への影響の大部分を占める製品の使用に伴う排出量を含むスコープ3の排出量は含まれていない。さらにモハメッド皇太子の発言には、化石燃料の生産を段階的に廃止する計画は含まれておらず、純排出量の削減目標を達成するために、炭素回収・貯蔵技術に大きく依存した「炭素循環経済」のアプローチを採用することに言及した。
国際環境NGOのグリーンピースは、サウジアラビアの計画について排出量削減への具体的な取り組みがないことや、化石燃料への依存度が高いこと、また、最近では石油・ガスの生産量を増やすことを発表していることなどを指摘し、懸念を表明した。
【参照ページ】
(原文)HRH Crown Prince Inaugurates Saudi Green Initiative Forum with Wide Regional and International Participation
(日本語訳)サウジアラビア、ネット・ゼロ・プランを公表。賞賛と懐疑の声集まる