英国の銀行、投資家、その他の機関で構成される「Financing a Just Transition」は、ネット・ゼロへの移行に伴う大きな経済的変化から、労働者、サプライヤー、コミュニティ、消費者が恩恵を受け、弱い立場にある人々を保護するために、金融機関がどのように支援できるかをまとめた新しい報告書「Just Zero」を発表した。
パリ協定では、気候変動の影響を抑えるために必要なエネルギー転換の目標達成に伴う
経済的混乱の可能性を認識した上で、ネット・ゼロ・エコノミーの世界を実現することによる社会的な影響、例えば化石燃料や温室効果ガスを大量に消費する産業に大きく依存しているコミュニティへの影響などに対処することを目的として、「公正な移行」の概念を盛り込んだ。協定には、以下の条項が含まれている。
「国が定めた開発の優先順位に従って、労働力の公正な移行と、ディーセントワークと質の高い仕事の創出を考慮に入れること。」
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス&ポリティカル・サイエンスのグランサム気候変動・環境研究所のチームが作成したこの新しいレポートは、公正な移行には何が必要かを概説し、公正な移行を実現するための金融機関の初期の取り組みを明らかにし、システム全体の変革を実現するためには何が必要かを指摘している。本報告書の主要なメッセージは、ネット・ゼロを達成するために必要な資本の再配分は、より質の高い雇用を創出し、コミュニティを活性化し、不平等を是正することで、公正な移行を支援することができるということ、また、金融機関は、移行の環境的・社会的側面を政策や意思決定に組み込むことで、重要な役割を果たすことができるということだ。
本報告書では、金融、場所、政策という主要な優先分野において、一連の提言を行っている。金融面では気候戦略や資金調達計画に「公正な移行」を組み込むこと、ネット・ゼロへの道のりにおいて社会的にプラスの影響を与えることを約束している企業に積極的に融資すること、企業のネット・ゼロ計画への関与に「公正な移行」を組み込むことなどを提言している。
「場所」に関する提言としては、ネット・ゼロと公正な移行のための資金の需要と供給を結びつけるために、地域の気候変動ファイナンス・ハブを開発することや、地域の中小企業に金融面と非金融面の両方の支援を提供することなどが挙げられる。政策立案者に対しては、高炭素経済下で働く労働者の公正な移行を実現するためのグリーン・ジョブズ計画の実施、公正な移行を政府のネット・ゼロ戦略の中核要素とすること、気候変動対策のための財政政策に社会的配慮を盛り込むこと、英国のグリーン・ファイナンス戦略の社会的側面を強化することなどが提言されている。
【参照ページ】
(原文)Just zero: 2021 report of the UK Financing a Just Transition Alliance
(日本語訳)英銀行と投資家群、ネット・ゼロへの公正な移行のための報告書「Just Zero」を発表
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