
7月2日、JPモルガンのブロックチェーン部門であるKinexys by J.P. Morganは、ボランタリー・カーボン・マーケット(VCM)の信頼性と効率性を向上させることを目的とした新たなアプリケーションの試験運用を開始したと発表した。この取り組みには、S&Pグローバル Commodity Insights、EcoRegistry、International Carbon Registry(ICR)といった主要なカーボンクレジット・レジストリが参加している。
同アプリケーションは、Kinexys Digital Assetsという多資産トークン化プラットフォーム上で開発されており、カーボンクレジットをレジストリ層でトークン化する初の試みである。これにより、アカウント、プロジェクト、クレジットのライフサイクル管理の効率化や、外部関係者によるレジストリデータの読取・操作の簡素化が期待されている。現在、EcoRegistryとICRは既に初期テストを完了し、S&P Global Commodity Insightsは同社の「Environmental Registry」で試験を開始予定である。
Kinexysはこれに合わせ、VCMの発展可能性を探る調査報告書も発表した。報告書では、ブロックチェーン技術の透明性、トレーサビリティ、不変性が市場への信頼を構築する上で重要であるとされており、またトークン化が市場標準化の促進につながると指摘している。ただし、トークン化は万能ではなく、モニタリング・報告・検証(MRV)技術の整備や、格付け機関、保険会社との接続性確保もVCMの拡大には不可欠であると強調している。
JPMorganは2023年にも炭素市場原則を発表し、VCMの役割や課題、同社の支援方針を明示していた。今回の取り組みはその延長線上にあり、グローバルなカーボンクレジット市場における標準化と信頼性向上への貢献を目指すものである。VCMが直面する非効率性、透明性の欠如、標準化不足といった課題に対し、ブロックチェーン技術が解決の鍵を握る可能性が注目されている。
(原文)Kinexys by J.P. Morgan advances new blockchain application development for carbon markets with S&P Global Commodity Insights, EcoRegistry and International Carbon Registry
(日本語参考訳)JPモルガンのKinexysは、S&P Global Commodity Insights、EcoRegistry、International Carbon Registryと連携し、炭素市場向けの新たなブロックチェーンアプリケーション開発を推進しています。