
4月24日、気候変動対策として世界的に注目が高まる自主的カーボンクレジット市場(VCM)に新たな風が吹いている。カーボンクレジット流通プラットフォームを手がけるPatch社(本社:米サンフランシスコ)は24日、市場の成長を阻んできた構造的課題を解決するための全く新しい統合プラットフォームを正式に発表した。
Patchが昨年発表したリサーチレポートによれば、世界の大手企業(Forbes2000社)がその年間利益のわずか1%をVCMに投入すれば、450億ドルに相当する圧倒的な気候ファイナンスが生まれる。しかし、実際にはこの資金が市場に十分流入していない。その最大の要因として、「市場の断片化」、「データと信頼性の不在」、「プロセスの非効率」という三重苦が指摘されている。
「現在、VCMで大口取引を行う上位100社のうち、社内にカーボン専門チームを持つ企業はわずか15%にとどまる。バイヤーは調達や審査、契約業務等で多くの非効率な作業やボトルネックに悩まされ、市場への十分な資金供給が妨げられている」とPatch社CEOのブレナン・スペラシー氏は説明する。
新プラットフォームは、「データ」「専門知識」「ソフトウェア」の三本柱でカーボンプログラムの全フェーズをサポートする。世界中のプロジェクト情報や価格、在庫データを集約・可視化し、Patchの気候科学チームが戦略設計から運用まで伴走。AIを活用した高度なソフトウェアにより、煩雑だったクレジット調達や審査、契約、管理、レポーティングまで一元化する。
プロジェクト選定に際しては、専門家と共にサステナビリティ目標を明確化し、最適なクレジット選択やポートフォリオを構築。価格に関しても、従来の自己申告ベースの不透明性を排除し、市場全体のリアルな売買データを用いて適正価格を提示。AIと専門チームによる審査で、厳しい基準を満たすプロジェクトへの迅速な意思決定を支援する。一括した契約や納品、資産管理、リスク監視までが同一のプラットフォームで完結できる点も大きな特徴だ。
新システムはこれまでにWorkdayやAutodesk、Bain and Company、Capgemini、Deutsche Telekomなど世界的企業で実証運用されてきた。IFS社サステナビリティ責任者のソフィー・グラハム氏は「Patchのプラットフォームは信頼できるデータと専門知識を融合し、本当にエンドツーエンドの体験を実現した」と高く評価する。
Patchは「単なる取引プラットフォームの枠を超えて、企業の脱炭素戦略・サステナビリティ活動全体を推進するエンジンとなることを目指す」としている。今後は変化の激しいカーボン市場においても、世界の持続可能な社会実現へ向けて新たな道筋を示していきそうだ。
(原文)Why we’re launching the all new Patch platform
(日本語参考訳)なぜ私たちは新しいパッチプラットフォームを立ち上げるのか