
3月3日、英国政府は、持続可能な航空燃料(SAF)産業を支援する新たな計画を発表した。航空業界の排出削減を促進し、英国をクリーンエネルギー分野のリーダーとすることを目指す。これにより、SAFの生産確保や航空業界の成長を支えるとともに、空港拡張計画の加速も可能となる。
SAFは従来のジェット燃料に代わる持続可能な選択肢であり、化石燃料と比較して最大70%の温室効果ガス排出削減が可能とされる。英国政府はこの分野への投資が2050年までに1万5000人の雇用創出と50億ポンドの経済効果をもたらすと試算している。
政府は今回、SAF産業の不確実性を軽減するため「Revenue Certainty Mechanism(RCM)」を導入する。この制度は、SAFの価格変動にかかわらず生産者に安定した収益を確保する仕組みであり、投資家の信頼を高め、国内SAF生産の拡大を後押しすることが狙いである。また、航空券価格の大幅な上昇を抑え、消費者への負担を最小限にする措置も含まれる。
この制度は2025年1月に導入される「SAF Mandate」と連携する。SAF Mandateは航空燃料に占めるSAFの割合を段階的に増やすことを義務付けるもので、航空業界の需要確保と国内生産促進を目的としている。英国はこの制度を世界で初めて法制化しており、航空業界の脱炭素化をリードする立場を確立している。
政府は3月3日から31日までRCMに関する意見公募を行い、春には「SAF法案」を議会に提出する予定である。これに先立ち、政府は成長戦略の一環としてSAF生産支援に6300万ポンドを投じることを発表している。
さらに、政府はロンドンのヒースロー空港に対し、今夏までに拡張計画を提出するよう要請。これを受け、空港拡張計画の政策方針を定める「Airports National Policy Statement(空港国家政策声明, ANPS)」の見直しを行い、環境・気候目標に沿った形での開発が進められる見通しだ。
持続可能な航空分野の推進に向け、英国政府は国際民間航空機関(ICAO)を通じて航空機の新たな炭素排出基準を提案し、2031年までに新型機の燃費効率を10%向上させる取り組みを主導している。さらに、2029年以降は航空機の騒音規制も強化し、離着陸時の騒音削減を目指す。
RCMの導入により、SAF市場の安定的な成長が期待される。この制度は英国の再生可能エネルギー分野で採用されている仕組みに類似しており、SAFの国内生産拡大や投資誘致、雇用創出に貢献するとみられる。政府はこの制度を暫定的な措置として導入し、SAF市場の成長を見守りながら必要に応じて調整を行う方針である。
【参照ページ】
(原文)Passengers to enjoy greener air travel as UK backs sustainable fuel production
(日本語参考訳)英国が持続可能な燃料生産を支持し、乗客はより環境に優しい航空旅行を楽しめるようになる