6月21日、経済産業省中小企業庁は、3月に実施した価格交渉促進月間のフォローアップ調査結果を発表した。この調査は、受注企業が発注企業に対してどの程度価格交渉や価格転嫁を行ったかを把握する目的で、毎年3月と9月に実施されている。
調査結果によれば、価格交渉が行われた割合は59.4%であり、前年よりも交渉の実施率が向上していた。これにより、価格交渉ができる雰囲気がさらに醸成されつつあることが確認された。価格転嫁率は46.1%で、コストの増額分を全額価格転嫁できた企業の割合が増加している。しかし、価格転嫁ができた企業とできなかった企業の二極化が進んでいる兆しも見られた。
また、価格交渉が行われた企業のうち約7割が労務費についても価格交渉を実施したと回答した。さらに、正当な理由のない原価低減要請によって価格転嫁ができず減額されたケースは全体の約1.2%にあたる約800社が該当し、これらの事例は下請法違反の可能性があるとして調査が進められている。
中小企業庁は、エネルギー価格や原材料費、労務費などが上昇する中で、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作るため、2021年9月から毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定している。また、2022年7月には下請中小企業振興法を改正し、「振興基準」を設け、発注側企業に対して受注側中小企業との間での価格交渉や価格転嫁に積極的に対応するよう要請している。2023年11月には内閣官房と公正取引委員会が「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を発表し、労務費の転嫁に係る価格交渉について発注者および受注者が採るべき行動を12の行動指針として取りまとめた。
中小企業庁は8月上旬を目途に、発注企業ごとの価格交渉や価格転嫁の評価を記載したリストを公表する予定である。社名リストの公表後、評価が芳しくない発注企業の経営者トップに対しては、事業所管大臣名での指導・助言を実施する予定である。中小企業庁は関係省庁と連携し、一層の価格交渉や価格転嫁の推進および取引適正化のため、様々な対策に粘り強く取り組んでいく方針である。