6月10日、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は、「認識の課題や地域差に直面しているにもかかわらず、従来のファンドや上場投資信託(ETF)を上回る成果を上げている」として、ESG投資に関するレポートを公表した。
本レポートによれば、概要は以下のとおり。
ESG投資の成長と課題(2017年~2023年)
環境・社会・ガバナンス(ESG)投資は2017年から2022年にかけて急成長を遂げ、投資家と一般投資家の双方にとって大きな焦点となった。モーニングスターによると、2023年末までにESG関連ファンドが運用する資産総額は約3兆ドルに達する。しかし、インフレ抑制を目的とした一連の利上げは、ESGファンドのパフォーマンス低下を招いた。さらに、ESG投資は、特に化石燃料支持者からの政治的反発に直面し、一部の企業やファンド・マネージャーは、ESGイニシアティブを重視しない、あるいは気候変動に焦点を当てたグループと手を切ることになった。
レポートの概要
本レポートでは、ESGファンドのパフォーマンスとリターン、投資の流れ、地域差、規制の動向、大口投資家やアセットオーナーの視点を検証している。課題はあるものの、ESGファンドが従来型のファンドを上回るパフォーマンスを示すなど、ESGは依然として重要である。規制当局は気候変動リスク管理、基準や情報開示の改善を引き続き強調している。
ESGファンドのパフォーマンス
2023年、サステナブル・ファンドは従来型ファンドをアウトパフォームし、リターンの中央値は12.6%であったのに対し、従来型ファンドは8.6%であった。この傾向は株式と債券の両資産で一貫していた。ESGファンドは、2019年以降、2022年を除き、概ね毎年従来型ファンドをアウトパフォームしている。同様に、ESG ETFは過去4年のうち3年で従来型ETFをアウトパフォームした。
セクター別の投資の違い
サステナブル・ファンドと従来型ファンドとの主な違いは、ESGファンドにおけるエネルギー・セクターのアンダーウェイトである。2023年、クリーンエネルギーは金利上昇により市場全体をアンダーパフォームしたが、一方でロシア・ウクライナ戦争は石油・ガス価格を押し上げ、エネルギー株を支援した。最近の上昇にもかかわらず、化石燃料株は過去10年間クリーン・エネルギー株をアウトパフォームしていない。
ファンドのフローと地域動向
2023年、サステナブル・ファンドへの資金流入は開始時の2%に達し、ファンド業界全体の増加率0.17%を上回った。逆に、欧州ではサステナブル・ファンドへの資金流入が約110億ドルとなり、前四半期の2倍以上となった。欧州は依然としてESGのリーダーであり、このカテゴリーの運用ファンドの84%を組成している。
ESGへの取り組み
資産運用会社を対象とした調査によると、米国のファンド・ハウスは、欧州のファンド・ハウスに比べ、ESGへのコミットメントが弱い。アセットオーナーや投資家を対象とした調査では、サステナビリティやESGを投資プロセスに組み込む傾向が強まっていることが示されている。
規制の動向
規制当局は、気候変動リスクを重視する姿勢を強めており、気候変動やESGに関する透明性の向上や確実な報告を求めている。欧州や多くのアジア諸国は、ESG政策に対する規制当局の強い支持を示しており、米国証券取引委員会の気候変動に関する情報開示要件は、規制当局の関与拡大に向けた暫定的な第一歩とな っている。
まとめると、ESG投資は特に米国で課題に直面しているものの、持続可能な開発において重要な役割を果たし、成長を続けている。規制当局の支援と良好なパフォーマンス傾向は、ESG投資の将来が有望であることを示している。
【参照ページ】
(原文)ESG investing: Steady growth amidst adversity | IEEFA
(日本語参考訳)ESG投資: 逆境の中での着実な成長