2月28日、IBMが発表した新たなグローバル調査によると、サステナビリティを経営に組み込んでいる企業は、サステナビリティへの取り組みに多くの費用を費やさなくても、収益成長、収益性、人材確保などの分野で、同業他社よりも大きなメリットを享受できる可能性が高い。
新調査では、IBMのビジネス・バリュー研究所(IBV)がオックスフォード・エコノミクスと共同で、22カ国、22業種の経営幹部5,000人を対象に、サステナビリティへの取り組みの進捗状況、投資、成果、組織が直面する主要課題を調査した。
調査結果によると、世界の経営幹部は、サステナビリティへの取り組みから大きな価値を得ることを期待している。75%がサステナビリティがより良い業績をもたらすことに同意し、72%がサステナビリティはコストセンターではなく、収益をもたらす可能性があると回答している。同様に、76%がサステナビリティは事業戦略の中心であると回答し、69%がサステナビリティは組織においてより高い優先順位が必要であると回答している。
サステナビリティがもたらすビジネス上の利益についてはコンセンサスが得られている一方で、調査対象となった経営幹部の半数近く(47%)がサステナビリティへの投資資金繰りに苦労していると回答し、サステナビリティ戦略の実行において大きな前進があったと回答したのはわずか30%であった。
企業がサステナビリティへの取り組みと投資において直面している困難を浮き彫りにした本調査からの重要な洞察のひとつは、戦略よりもコンプライアンスに重点を置いていることであり、IBMの調査によると、企業のサステナビリティ報告への支出は、サステナビリティ・イノベーションへの支出を43%上回っている。
これに関連して、本調査では、サステナビリティが業績に与える影響を左右する最大の要因の1つは、企業がサステナビリティを組織全体にどの程度組み込んでいるかであることが示された。つまり、サステナビリティを機能的なサイロやコンプライアンス要件として扱うのではなく、中核的な機能やワークフローに事業部門全体で統合しているのである。同様に、「組み込み」企業は、収益性で同業他社を上回る可能性が52%高く、人材獲得で上回る可能性が56%高かった。
興味深いことに、「組み込み」企業は、サステナビリティへの取り組みにより良い財務的成果を求める傾向が強く、これらの企業の53%が、持続可能性への投資を正当化するためにはビジネス上の利益が不可欠であると回答している。同様に、これらの企業は、同業他社よりもサステナビリティに多額の支出をしているわけでも、大規模なプログラムを推進しているわけでもなく、サステナビリティを中核業務に組み込むことで利益を得ていることがわかった。
本調査では、企業がサステナビリティを組み込む際に直面する主な課題についても調査しており、「データの使いやすさ」が障壁の上位に挙げられている。回答者の大多数(82%)が、サステナビリティの成果を達成するためには高品質なデータと透明性が必要であることに同意しているが、ERP、企業資産管理、CRM、エネルギー管理システム、設備管理システムなどの基幹システムからサステナビリティデータを自動的に入手できると回答したのは約40%にすぎなかった。しかし、報告書によると、ジェネレーティブAIはサステナビリティにとって「ゲームチェンジャー」になる可能性があり、64%の経営幹部がサステナビリティの取り組みにとって生成AIが重要になると回答し、73%が生成AIへの投資を増やす予定であるとしている。
その他の主な課題としては、40%近くが必要なスキルの不足を報告していることや、サステナビリティのコアビジネス機能への統合が限定的であることが挙げられている。回答者は今後数年間でいくつかの分野でサステナビリティの統合レベルの大幅な向上を期待していると報告しており、中でも財務、エネルギー管理、企業資産管理などの分野で最大の改善が見込まれている。
【参照ページ】
(原文)IBM Study: Sustainability Remains a Business Imperative, But Current Approaches are Falling Short
(日本語参考訳)IBMの研究: サステナビリティは依然としてビジネスの必須課題だが、現在のアプローチでは不十分