12月8日、欧州議会と欧州理事会の議員らは、建物におけるエネルギー使用量と排出量の削減を目的としたEUの「建物のエネルギー性能指令(EPBD)」を強化する暫定合意に達したと発表した。この強化には、化石燃料ボイラーの段階的廃止や、2030年までにすべての新築建物をゼロエミッションにする目標などが盛り込まれている。
建物は、世界的な温室効果ガス(GHG)排出の主要な原因であり、また、長期的な性質を持つことから、最も代替が難しいもののひとつでもある。欧州委員会によると、建物はEUで消費されるエネルギーの40%を占め、エネルギー関連のGHG排出量の36%を占めている。家庭のエネルギー消費の80%は、暖房、冷房、給湯に使われている。
今回の合意は、欧州委員会が2021年12月にEPBD指令の再改定を提案したことを受けたもので、欧州委員会の「Fit for 55」ロードマップ(2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で55%削減するEUの戦略案)の一環である。
更新された指令の主な規定には、2030年までにすべての新しい住宅および非住宅の建物について、化石燃料からのオンサイト排出をゼロにすることが義務付けられており、公共所有の建物については2028年までにこのマイルストーンを達成することが求められている。また、2040年までに化石燃料を燃料とするボイラーを完全に廃止することを目標に、加盟国に対し、建物の冷暖房における化石燃料の段階的廃止のための措置を定めることも求めている。
住宅については、2030年までに16%、2035年までに20〜22%の一次エネルギー使用量削減のための国家目標を採択するよう加盟国に求めている。
非住宅ビルは、提案された規則の下で、最低エネルギー性能基準を満たすことが要求され、2030年までに16%、2033年までに26%の性能の悪いビルを改築することになる。
また、すべての新しい建物は、屋上太陽光発電または太陽熱利用設備の設置が可能であることを含め、改正指令のもとで太陽光発電に対応することが求められる。
新たな合意指令には、建物の改修の波を支援するための措置も盛り込まれている。加盟国は、建物ストックを脱炭素化し、資金調達、訓練、熟練労働者の確保などの障壁に対処するための国家的な建物改修計画の策定を義務付けられ、建物所有者が段階的にゼロ・エミッションビルに改修する際の指針となる国家的な「建物改修パスポート制度」の設置が義務付けられている。
今回の暫定合意により、新指令は発効前に欧州議会と理事会で正式に採択される必要がある。
【参照ページ】
(参考記事)EU Lawmakers agree on new rules to decarbonise buildings