UNEP、排出量ギャップ報告書2023発行。対策強化なしでは2100年に2.5~2.9℃上昇

11月20日、国連環境計画(UNEP)は、アラブ首長国連邦のドバイで開催される2023年気候サミットに先駆け、「排出量ギャップ報告書2023」を発行した。本報告書によると、パリ協定の下での現在のコミットメントでは、今世紀の世界の気温は産業革命前より2.5~2.9℃上昇する方向にあり、気候変動対策の強化が早急に必要であることが指摘された。

本報告書は、予測される2030年の温室効果ガス(GHG)排出量を2℃パスウェイで28%、1.5℃パスウェイで42%削減するためには、世界的な低炭素化が必要であることを強調。パリ協定の気温目標達成の可能性を維持するためには、この10年間で緩和を大幅に強化し、排出量ギャップを縮小する必要がある。これにより、次回の国別拠出金(NDC)における2035年までの野心的な目標が達成されやすくなり、現在世界の排出量の約80%をカバーするネットゼロの誓約を達成できる可能性が高まる。

条件付きNDCと長期的なネット・ゼロの誓約がすべて達成されれば、気温上昇を2℃に抑えることは可能であるが、G20のどの国も、ネット・ゼロ目標に見合うペースで排出量を削減していないと言及した。最も楽観的なシナリオでも、温暖化を1.5℃に抑える可能性は14%に過ぎない。

本報告書は、すべての国に対し、エネルギー転換を中心に、経済全体にわたる低炭素開発の転換を実現するよう求めている。達成に向けては、国際的な金融支援を大幅に拡大し、新たな公的・民間資金源を、資本コストを引き下げる資金調達メカニズム(デットファイナンス、長期譲許的資金調達、保証、触媒的資金調達など)を通じて再構築する必要があるとした。

また、GHG排出削減を遅らせることは、将来的に大気中の二酸化炭素除去への依存度を高めると指摘。CO2除去は、主に植林、再植林、森林管理を通じて、すでに実施されているものの、最もコストの低い方法では、従来のCO2除去量と、空気中のCO2を直接回収して貯蔵するような新しいCO2除去量の両方が大幅に増加することを想定している。

【参照ページ】
(原文)Nations must go further than current Paris pledges or face global warming of 2.5-2.9°C
(日本語参考訳)UNEP、排出量ギャップ報告書2023発行。対策強化なしでは2100年に2.5~2.9℃上昇

関連記事

“ランキングのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2024-12-11

    ユニリーバがNufarmとサステナブルなオイルの生産を加速

    11月26日、ユニリーバはオーストラリアの化学メーカーであるNufarmとのパートナーシップを発表…
  2. SSBJ基準案へのFAQ解説:サステナビリティ開示準備ガイド

    2024-12-10

    SSBJ基準案へのFAQ解説:サステナビリティ開示準備ガイド

    SSBJが新基準案を発表し(2024年3月)、企業のサステナビリティに関連する情報開示の制度化が進…
  3. 2024-12-6

    金融庁、「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」を発表:サステナビリティに関する開示を強化

    11月8日、金融庁は「記述情報の開示の好事例集2024(第1弾)」を公表した。本事例集は、企業がサ…

““登録02へのリンク"

ページ上部へ戻る