6月7日、自動車メーカーのメルセデス・ベンツは、スウェーデンのスタートアップ企業であるH2 Green Steelと、欧州で車両に使用する低炭素鋼を供給し、北米でグリーンスチール・サプライチェーンの確立を目指す新たな契約を締結した。
2020年に設立されたH2 Green Steelは、スウェーデンのボーデンに世界初の大規模な化石燃料を使わない製鉄所を建設中である。同プロジェクトには、鉄鋼生産施設と一体化したギガ規模のグリーン水素プラントも含まれている。同社は、酸化鉄から酸素を取り除くためにグリーン電力で製造された水素を採用することで通常発生するCO2の大半を回避し、製造工程で発生するエネルギー需要には100%再生可能な資源からの電力を使用する。H2 Green Steelは2025年の生産開始を目指しており、2030年までに500万トンのほぼ化石燃料を使用しない鉄鋼を生産する計画である。
メルセデス・ベンツは2021年、鉄鋼メーカーの1億500万ドル(約146億円)のシリーズA資金調達ラウンドの一環として、 H2 Green Steelの株式を購入した。
世界のメーカーがサプライチェーンの脱炭素化を目指す中、化石燃料を使用しない鉄鋼の需要は今後数年間で大幅に増加すると予想されている。鉄鋼業は、世界的に最もCO2を排出する業種の一つであり、化石燃料の使用による温室効果ガス排出量の7~9%を占めるなど、削減がより困難な業種の一つである。
今回の合意により、H2 Green Steelは、メルセデス・ベンツの欧州プレス工場に年間約5万トンのCO2フリー鋼材を供給する。また、両社は北米における持続可能な鉄鋼サプライチェーンの確立を目指したMoUも発表した。
メルセデス・ベンツは今年初め、同社が投資家やアナリスト向けに開催したESGカンファレンスで発表したESG関連の一連の目標や取り組みの一環として、遅くとも2039年からグリーン・スチール・サプライチェーンを実現する目標を追求していると表明し、2030年までに生産時のCO2排出量を80%削減する目標も掲げている。