欧州委員会、医薬品へのアクセスを強化するための改革を提案

4月26日、欧州委員会は、医薬品に関する指令と規則の改正を提案した。本改訂は、医薬品をより利用しやすく、アクセスしやすく、手頃な価格とすることを目的としている。 本改革に加えて、欧州委員会は、薬剤耐性(AMR)の観点を強化するための理事会勧告も提案している。

医薬品へのアクセスでは、新しいインセンティブにより、企業が自社の医薬品をすべてのEU加盟国の患者に提供し、満たされていない医療ニーズに対応する製品を開発するよう奨励する。 さらに、ジェネリック医薬品やバイオシミラー医薬品の早期入手が促進され、市場承認手続きが簡素化される。 医薬品開発に対する公的資金の透明性を高めるための措置も導入される。

また、医薬品の不足に対処し、供給の安全を確保することも明示した。国家当局と欧州医薬品庁(EMA)による医薬品の不足を監視するための新しい要件と、EMAのより強力な調整の役割が導入されている。 医薬品の不足や回収の早期報告、不足防止計画の策定・維持など、企業の義務が強化される。欧州委員会は、特定の重要な医薬品の供給の安全性を強化するために、法的拘束力のある措置を採用することもできる。

環境保護の強化では、現在の環境要件をより適切に実施することで、医薬品が環境と公衆衛生に与える潜在的な悪影響を抑えることができる。

薬剤耐性(AMR)は、EUにおける健康への脅威のトップ3の1つと見なされている。 本改革では、耐性病原体を治療できる新しい抗菌薬に投資する企業に、譲渡可能なバウチャーを通じてインセンティブを提供する。 抗菌剤の有効性を維持するために、適応した包装や処方要件など、抗菌剤の慎重な使用のための対策と目標も導入される。また、AMRに対抗するためのEUの行動を強化するOne Healthアプローチも実施。推奨される目標は、欧州疾病予防管理センター (ECDC) の支援を受けて設計されており、各国の状況を考慮している。 また、今後数年間の進捗状況をより適切に監視することもできる。

EUで承認された医薬品は、まだ十分に迅速に患者に届けられておらず、すべての加盟国で等しく入手できるわけではない。 満たされていない医療ニーズ、希少疾患、AMRへの対応には大きなギャップが存在する。 革新的な治療の高価格と医薬品の不足は、患者と医療システムにとって依然として重要な懸念事項である。 さらに、EUが魅力的な投資先であり続け、医薬品の開発における世界的リーダーであることを保証するために、手続きを簡素化しながら、デジタル化と新技術に規則を適応させる必要がある。 欧州グリーンディールの目的に沿って医薬品生産の環境への影響に対処する必要性も高まっている。

【参照ページ】
(原文)European Health Union: Commission proposes pharmaceuticals reform for more accessible, affordable and innovative medicines
(日本語訳)欧州委員会、アクセスしやすく、安価で革新的な医薬品を提供するための医薬品改革を提案

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る