12月22日、JPモルガン・チェースは、2030年の融資による排出量目標を、航空・鉄鋼・セメントを含む一連の新しい炭素集約型部門に拡大することを発表した。本目標は、同社と顧客にとっての気候リスクと機会に対するJPモルガンの取り組みの進捗とアプローチを紹介する、同社の2022年気候レポートの発表と同時に発表された。
新しい目標は、2020年10月に発表した、パリ協定の目標に沿った融資活動を行い、顧客が低炭素社会への移行に伴う課題を克服し、長期的な経済・環境利益を活用できるよう支援するというコミットメントの一環を成すものである。
また、本目標は、2030年の資金調達による排出量目標の対象部門を拡大するものである。JPモルガンは昨年、米国の大手銀行として初めて2030年のポートフォリオレベルの排出量目標を設定し、石油・ガス、電力、自動車製造の各分野を対象とした。
報告書によると、新しい目標はいずれも国際エネルギー機関(IEA)の2050年までのネット・ゼロ・シナリオに沿うように意図して作られ、それぞれが排出強度、つまり単位生産高あたりの排出量に焦点を当てている。目標には、粗鋼1トンあたりの排出量を31%削減、セメント製品1トンあたりの排出量を29%削減、航空部門の旅客・貨物の売上トンキロ(RTK)あたりのスコープ1排出量を36%削減することなどが含まれている。
また、2022年6月時点における、既存の2030年セクター目標に対するJPモルガンの進捗状況も報告された。電力部門と自動車製造部門の排出量原単位削減は、2019年基準からそれぞれ22%、10%減と大きな進捗があった一方、石油・ガスセクターの原単位はほぼ横ばいにとどまった。
電力部門では、顧客が発電構成をより低排出量の電源にシフトしたこと、JPモルガンがより低排出量の企業やプロジェクトに対する融資を増やしたことが進展の要因である。自動車製造業の削減は、「新規および新興の純EVメーカーへの融資」によるものであった。石油・ガス部門では、パンデミックと商品市場の変動により2019年に天然ガスミックスが高まったのに続き、企業の燃料生産ミックスが石油にシフトし、天然ガスから離れたことが排出量原単位の上昇を促したと指摘している。
JPモルガンは、さらなる炭素集約型セクターへの目標拡大を目指すとともに、既存のセクターの目標を再評価する予定であるとし、2023年にはスコープ3の絶対金融排出量を公表する予定であると述べている。
【参照ページ】
(原文)JPMorgan sets 2030 emissions targets for polluting industries
(日本語参考訳)JPモルガン、航空・鉄鋼・セメントセクターの排出量目標を公表