PwCのレポート:ESG投資が急増中、需要が供給を上回る

PwCのレポート:ESG投資が急増中、需要が供給を上回る

10月10日、グローバルなプロフェッショナルサービス企業であるPwCは、「資産運用と富の革命2022」を公表した。ESG関連の運用資産(AUM)は今後数年間急増し続け、資産運用(AWM)投資全体の伸びを大幅に上回ると予想されており、2026年までにESG AUMが34兆ドル(約5,000兆円)、あるいは全資産の21.5%に達すると予測している。

本レポートによると、ESGはAWM市場の主要な成長ドライバーとなって資産価格やフローに取って代わり、従来の成長エンジンが経済の逆風によって脅かされるようになる。

PwCは、本レポートの作成にあたり、世界の機関投資家および資産運用会社250 社、総資産額 60 兆ドル(約8,860兆円)、すなわち世界の運用資産額の約半数を対象に調査を実施した。

投資家、特に米国では、ESG投資は社会的課題のために財務的利益を犠牲にしているとして政治的な抵抗もあった。しかし、今回の調査では、投資家はESG指向の投資がパフォーマンス改善につながることを期待していると判明した。資産運用会社の約90%が、ESGを投資戦略に取り入れることで全体的なリターンが向上すると回答し、機関投資家の60%が、ESG投資によってすでに相対的なパフォーマンスが向上していると報告した。

さらに、調査対象となった機関投資家の4分の3が、ESGは今や受託者責任の一部であると回答し、72%が資産運用会社に対してESG関連の目標を設定していると報告した。

ESG投資は米国と欧州で同様の勢いがある。今後2年間にESG商品への配分を増やす予定の機関投資家は米国で81%、欧州では84%であった。PwCは、2026年までに米国におけるESGのAUMが10兆ドル(約1,480兆円)超に達し、2021年の水準の2倍以上になると予測している。

ESGへの配分が急拡大する中、ESG投資商品への需要が供給を上回っていることが報告書から示された。調査対象となった機関投資家の88%は、資産運用会社がESG商品の新規開発に積極的に取り組むことを望んでいる。しかし、ESGファンドの新規立ち上げを計画していると回答した運用会社はわずか45%に過ぎなかった。資産運用会社は、既存商品の転換に重点を置いており、76%がESG準拠の商品に改修・調整する計画を報告している。

また、投資家の78%がESGファンドに高い手数料を払うと回答し、半数以上が報酬とESGパフォーマンスを関連付けることに前向きであった。資産運用会社での規制やコンプライアンスコストの増加を考慮すると、手数料の引き上げの可能性は高い。

調査によると、ESG投資の主な障壁は、複雑で一貫性のない規制と、ESG商品の不透明性である。投資家の70%以上が、資産運用会社に対するESG規制要件の強化に賛成と回答し、資産運用会社の86%が、AWM業界では商品の誤表示が蔓延していると考えていた。

PwCによれば、これらの傾向は、資産運用会社が革新的なESG商品を開発し、新たな委託を獲得する「一世一代の機会」を示している。

【参照ページ】
(原文)ESG-focused institutional investment seen soaring 84% to US$33.9 trillion in 2026, making up 21.5% of assets under management: PwC report
(日本語訳)ESG に焦点を当てた機関投資家は、2026 年に 84% 急増して 33.9 兆米ドルに達し、運用資産の 21.5% を占める: PwC レポート

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