6月7日、S&P グローバル・サステナブルが公表した新しいレポートによると、グリーンまたは環境投資ファンドのうち、パリ協定の下で説明されたグローバルな気候目標を達成しようとしているのはわずか12%であることが明らかになった。気候変動に焦点を当てたファンドの割合はさらに少ない。
パリ協定は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国が気候変動に立ち向かうために策定した複数国による協定である。本協定では、世界の平均気温の上昇を2℃以下に、できる限り1.5℃に抑えるという目標が示されている。
報告書の作成にあたり、S&Pは、時価総額20兆ドル(約2,600兆円)を超える約12,000の株式投資信託とETFのユニバース(世界全体)を調査した。その中で、ファンド名や投資対象に「グリーン」または「環境」を使用しているファンドを約300本(時価総額3,500億ドル(約47兆円)超)確認した。さらに、時価総額300億ドル(約4兆円)以上の気候変動に特化した51のファンドを特定した。
分析では、ファンドが保有する17,000社以上の企業について、S&P Global Trucost Paris Alignmentのデータを重ね合わせ、2012年以降のスコープ1と2の過去の排出量の合計、2025年までの排出量予測、脱炭素化軌道に基づく様々な温度シナリオとそれらの傾向の比較などを行った。
分析の結果、調査対象となった12,000のファンドのうち、パリ協定の「2℃を大きく下回る」シナリオに合致しているのはわずか11%であった。また、グリーンファンドや環境ファンドについても、パリ協定の目標に合致しているのはわずか12%。気候変動基金では、パリ協定に沿った運用をしていると評価されたのは10%未満であった。
グリーンファンドと気候変動に特化したファンドは、他のカテゴリーではやや良好な結果を示しており、約3分の2のファンドが温暖化を3℃に抑える方向にある。しかし、これは気候変動ファンドの3分の1が、3℃をオーバーシュートする軌道にあるという意味でもある。
S&Pは、パリ協定を目標に掲げるファンドはほとんどなく、多くは化石燃料への投資を避け、再生可能エネルギーや気候ソリューションなどの分野に焦点を当てたスクリーニングを適用していると指摘した。また、ファンドの一部は脱炭素化を義務付けられた排出量の多い企業に投資していると述べている。
【参照ページ】
(原文)Green funds have a Paris alignment problem
(日本語訳)S&Pレポート:世界の脱炭素化目標に沿った気候変動ファンドは10%未満