5月17日、サステナビリティ・コンサルタントであるERMがSustainAbility Instituteから発表した新たな調査によると、現在、企業発行体は気候関連開示のために年間平均67万5千ドル(約8,600万円)以上、機関投資家は気候データの収集、分析、報告のために平均140万ドル(約1億8,000千万円)近くを費やしていることが明らかになった。
今回の調査は、規制当局、基準設定主体、企業によって開発されている気候変動開示のガイドラインや手法への情報提供を目的としており、企業課題および機関投資家が気候変動関連開示について認識するコストと利益を調査している。本報告書は、サステナビリティに焦点を当てた非営利団体Ceresと気候管理・会計プラットフォーム会社Persefoniの委託を受け、ERMの実務家が作成した調査結果に基づいている。今回の調査は、米国の様々なセクターの発行体39社(時価総額10億ドル(約1,280億円)未満から2000億ドル(約25兆円)以上)および機関投資家35社(総資産額7兆2000億ドル(約920兆円)からデータを収集したものだ。
今回の調査は、企業が複数のステークホルダーから気候変動に関する情報開示を求められるようになり、特に規制当局が気候変動に関する報告義務を導入する動きの強まりを受けて実施された。3月には、米国証券取引委員会(SEC)が気候変動開示規則案を公表した。
【関連記事】SEC、気候変動開示規則案を発表
調査によると、企業の発行体は、気候関連開示活動に平均で年間677,000ドル(約8,700万円)を費やしており、最大のコスト項目は、温室効果ガス(GHG)分析と開示(平均3,000万円)、気候シナリオ分析(約1,900万円)、気候リスク管理の内部統制(約1,900万円)であった。
SECは、提案された規則に準拠するための独自の見積もりを発表しており、初年度のコストは64万ドル(約8,200万円)、発行者の年間継続コストは53万ドル(約6,800万円)と予測している。この調査では、SECの要求事項の対象となる特定の要素について調査し、発行者がこれらの要素に平均53万3,000ドル(約6,800万円)を費やしていることがわかった。SECの要求事項に含まれていない項目としては、気候変動関連の株主提案に対する委任状回答に関するコスト、低炭素移行計画の策定・報告、ステークホルダーとのエンゲージメントや政府対応に関するコストなどが挙げられる。
調査によると、機関投資家は気候データの収集、分析、報告のために平均137万2千ドルを費やしている。投資家の主な支出項目は、外部の ESG格付け、データプロバイダー、コンサルタント (平均6,200万円)、社内、社外弁護士、委任状勧誘者による分析(約5,200万円)、内部の気候関連 投資分析(約4,600万円)であった。
また、本調査では、気候変動開示と影響評価 によってもたらされる利益について、発行体と投資家に順位をつけてもらった。発行体にとっては、サステナビリティ、気候、ESG、SDGの目標達成に向けたパフォーマンスの向上が上位に挙げられ、次いで企業戦略を強化するためのデータへのアクセス向上、NGO・NPO・市民社会との関係や評価の向上が挙げられた。投資家にとっては、気候変動開示や関連商品に対する顧客の需要に応えることが第一位であり、サステナビリティ、気候、ESG、SDGの目標達成に向けたパフォーマンスの向上、リスクの低減、財務パフォーマンスの向上がそれに続く。
投資家が報告した気候変動データの活用方法のトップ3は、株主エンゲージメント、委任状による議決権行使、ポートフォリオ全体のリスク管理であった。
【参照ページ】
(原文)Survey reveals costs and benefits of climate-related disclosure for companies and investors
(日本語訳)気候変動に関する情報開示が企業や投資家にもたらすコストとベネフィットを明らかにする調査結果