IEEFA、報告書を発表 グリーンアンモニアへの転換がインド政府の負担を軽減

4月21日、米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は報告書を発表した。本報告書によると、グリーンアンモニアへのシフトは、インド政府の膨大な肥料補助金負担を大幅に軽減するとともに、肥料製造のための高価な液化天然ガス(LNG)の輸入依存を減らし、エネルギー自給率を高めるという。

インドの肥料補助金は膨張を続けており、2022/23年に1兆500億ルピー(約1兆8000億円)、3年連続で1兆ルピー(約1兆6000億円)を超えている。しかし、ロシア・ウクライナ戦争で悪化した世界のガス価格の高騰と変動により、肥料価格は過去最高水準に達しており、補助金の大幅な増額が予測されている。

ガス価格は2021年1月の10.75米ドル/MMBtuから、2022年1月には33.00米ドルに上昇した。それに伴い、世界の尿素価格は2021年10月から2022年3月にかけて690〜794米ドル/トンと過去最高水準に高騰している。しかし、インド農業部門向けの尿素は、政府が尿素の世界基準価格の90%以上の重い補助金を支給しているため、71米ドル/トンの小売価格にとどまっている。

本報告書では、世界中の主要なグリーン水素→グリーンアンモニアプロジェクトを取り上げ、グリッド電力、24時間稼働の再生可能電力、太陽光発電+バッテリーという様々な電力投入を用いたグリーンアンモニア生産コストについて検証した。

グリーン水素の製造コストは現在、1kgあたり約5.5米ドル、太陽光資源の豊富な国では1kgあたり3米ドルである。コストは今後10年で急落し続けると予測されているが、1kgあたり2米ドルのグレー水素と競うには、電解槽と再生可能エネルギーという2つの重要なインプットのコストがさらに低下する必要がある。

インドで電解槽を作れば、グリーンアンモニアのためのグリーン水素の製造コストを削減できる。Greenko Groupの子会社であるGreenko ZeroCと、ベルギーのアルカリ性電解槽メーカーであるJohn Cockerillは、インド最大の電解槽Gigafactoryを共同で設立する契約を締結した。

また、政府の新しいグリーン水素政策では、グリーン水素とグリーンアンモニアのメーカーに、再生可能エネルギーパークへの土地の割り当て、25年間の州間送電料の免除、再生可能エネルギーの最大30日間のバンク利用など、さまざまなインセンティブを提供している。

【参照ページ】
(原文)IEEFA: A shift to green ammonia from green hydrogen can reduce India’s fertiliser subsidy burden
(日本語訳)IEEFA:グリーン水素からグリーンアンモニアへのシフト、インドの肥料補助金負担を軽減

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…

ピックアップ記事

  1. 2025-9-16

    セブン&アイHD、TCFD・TNFD統合開示を公表 財務インパクトの試算と自然資本分析も深化

    9月8日、セブン&アイ・ホールディングスは、「気候・自然関連情報報告書―TCFD・TNFD統合開示…
  2. ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    2025-9-15

    ESGフロントライン:米SEC委員長がサステナビリティ開示基準へ懸念を表明

    ※本記事は、ESG Journal編集部が注目のニュースを取り上げ、独自の視点で考察しています。 …
  3. 2025-9-12

    ISOとGHGプロトコル、温室効果ガス基準を統合へ 世界共通言語の構築目指す

    9月9日、ISO(国際標準化機構)とGHGプロトコルが、既存のGHG基準を統合し、新たな排出量算定…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る