米国エネルギー省、再エネコストの低下によりインドの電源転換の加速を予測。モディ政権の野心的な再エネ目標を後押し
米エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所(バークレーラボ)は、過去10年間にバッテリーストレージや風力・太陽光発電のコストが劇的に低下したことにより、インドは2030年までに電力需要が倍増する中で、安価で信頼できる電力を供給するためのより持続可能なシステムへ飛躍することができるようになったと発表した。
人口10億人を超えるインドは、急速な工業化と所得の増加により世界第3位のエネルギー消費国となっており、増大する電力需要に対応しつつ、汚染物質の削減と気候変動との戦いのために野心的なクリーンエネルギー目標を設定している。グラスゴーで開催された国連気候変動会議において、ナレンドラ・モディ首相は、2022年までに再生可能エネルギー容量を現在の100GWから175GWに引き上げ、2030年までに非化石燃料の電力容量を500GWに増加させると発表した。
研究者は、最新のコンピューターモデルとシミュレーションを用いて、2030年までのインドの電力需要を確実に満たすための最小コストでの投資経路を検討し、”Least Cost Pathway for India’s Power System Investments “として発表した。この研究では、インドが2030年までに500GWの非化石電力容量を導入するという目標を達成した場合、再生可能エネルギーとバッテリーストレージの価格低下が続けば、電力コストを8~10%削減できることを実証している。また、電力供給における二酸化炭素排出強度は、2020年比で2030年までに43〜50%削減される。
また、バークレー研究所の研究者は、2020年には25%しかなかったインドの電力供給のほぼ50%を、2030年までにカーボンフリー電源でまかなえることを明らかにした。このためには、10年間で再生可能エネルギーの総容量が4倍近くに増加する必要がある。また、農業用電力を太陽光発電の時間帯にシフトする、バッテリーを使用して1日のうち4〜6時間のエネルギーを夜間に貯蔵する、既存の火力発電所の柔軟性を活用するなど、柔軟な資源で再生可能エネルギーの増強を補完する方が、石炭やガスベースの発電所を新たに建設するより安価であることも判明した。
この調査によると、2030年までに電力部門の石炭消費量と温室効果ガス排出量は、ほぼ2020年レベルを維持できることが分かっている。したがって、電力需要を満たすためにクリーンなエネルギー源に移行しても、近い将来から中期的には石炭採掘や輸送関連の雇用が失われる可能性は低く、インドに長期的な移行計画を立てる時間を与えることができるのだ。
研究チームは補足報告書の中で、インドがコストを最小に抑えるためには、政策と規制の枠組みが重要であると強調している。このような枠組みには、州間で資源を共有できるようにすること、電力会社の計画と調達に信頼性と費用対効果を組み込むこと、電力市場の拡大と深化、エネルギー貯蔵の適切な評価と補償、既存のガスパイプラインとガス発電資産を有効に活用するための電力・ガス部門間の調整などが含まれる。
【参照ページ】
(原文)India’s Clean Power Target Will Double Electricity Supply Economically if Low-Cost Storage is Deployed
(日本語訳)印、再生可能エネルギーへの電源転換を加速