EFRAG、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)公開草案を発表

EFRAG、欧州サステナビリティ・レポーティング・グラウンドの提案書を発表

4月29日、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、欧州連合(EU)の次期「企業持続可能性報告指令(CSRD)」に基づき、企業がサステナビリティ関連の影響、機会、リスクを報告するための規則・要件案を定めた「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」の草案を発表した。

EFRAGの提案は、気候変動からバリューチェーンにおける労働者や企業行動ガバナンスに至るまで、環境、社会、ガバナンスに関する幅広いトピックを網羅する一連の公開草案(ED)として発表された。本規則の対象となる企業は、戦略やビジネスモデル、ガバナンスや組織、サステナビリティの影響、機会、リスクに関する重要性評価、さらに方針、目標、行動計画、パフォーマンスに関するサステナビリティ報告を提供することが求められる。

現在策定中のCSRDは、EUのサステナビリティ報告の枠組みである現行の非財務報告指令(NFRD)を大幅に更新することを目的としている。新規則では、サステナビリティの開示を求められる企業の数が現在の約12,000社から50,000社以上に大幅に拡大し、より詳細な報告義務が導入され、報告された情報に対する監査による保証が義務付けられる予定だ。

EUが過半数を出資する民間団体であるEFRAGは、2020年6月に欧州委員会から、NFRDの改訂の一環として、EUの新たなサステナビリティ報告基準の準備を委任された。2021年5月には、EFRAGはCSRDの報告基準を作成するよう要請された。

EFRAGが公開草案とともに発表した一般原則によると、新たな報告基準に準拠することで、企業はサステナビリティに関連する影響リスクと機会に関するすべての重要な情報を開示することが求められる。公開草案は、すべてのセクターに適用される「セクターにとらわれない」標準的な開示、特定のセクターで事業を行う企業に特に適用される開示、そして企業固有のレベルでのサステナビリティに関連する重要な影響、リスク、機会に関する開示を対象としている。

公開草案は、「環境」、「社会」、「ガバナンス」のカテゴリーに分けられる。「環境」のカテゴリーには、「気候変動」「汚染」「水・海洋資源」「生物多様性・生態系」「資源利用・循環型経済」が含まれる。「社会」には、「自社従業員」「バリューチェーンにおける労働者」「影響を受けるコミュニティ」「消費者とエンドユーザー」などが含まれる。「ガバナンス」には、「ガバナンス、リスクマネジメント、内部統制」、「企業行動」が含まれている。

新基準の特筆すべき点は、ダブルマテリアリティの概念の使用と、バリューチェーンのサステナビリティ要因の考慮だ。

EFRAGの草案では、「ダブルマテリアリティ原則に基づき、サステナビリティに関する事項を報告する」ことを組織に求めている。ダブルマテリアリティの下では、企業は、サステナビリティ事項が自社の業績や地位にどのような影響を与えるかだけでなく、自社が環境や社会に与える影響についても開示することが求められる。

また、新基準では、バリューチェーンにおけるサステナビリティ関連要因に関する重要な開示を求めている。例えば、気候変動公開草案では「Scope3 GHG排出量」の開示を要求している。同様に、「バリューチェーンにおける労働者」の草案では、バリューチェーンの労働者に対する実際および潜在的な影響を特定・管理するためのアプローチについて報告するよう企業に求めており、労働条件、機会均等へのアクセス、児童労働や強制労働などの人権問題といったトピックが取り上げられている。

EFRAGは、サステナビリティ報告スタンダード案の公表に伴い、公開草案の全体的な内容、基準の優先順位と段階的導入、提案されている要求事項の妥当性に関するフィードバックを受けるため、100日間のパブリックコンサルテーションを開始したと発表している。

【関連記事】
GRIとEFRAG、EUサステナビリティ・レポーティング・スタンダードの開発で協力
EFRAG、「欧州サステナビリティ報告スタンダード」の原案策定を担当するメンバー発表

【参照ページ】
(原文)EFRAG LAUNCHES A PUBLIC CONSULTATION ON THE DRAFT ESRS EDS
(日本語訳)EFRAG、ESRSのドラフト版に関するパブリックコンサルテーションを開始

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