
6月、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESG要素が企業価値や投資収益に与える影響を定量的に分析した最終報告書を発表した。本報告書は、日本企業を対象に、ESG関連のKPIとトービンのq、PBR、ROE、時価総額などの企業価値指標の関係を固定効果モデルで分析した成果をまとめたものである。
分析では、女性取締役比率、新規採用者に占める女性比率、役員選任議案の賛成率、業績連動型報酬制度、FTSE Eスコアなどが統計的に有意な正の影響を示した。特に女性取締役比率は、企業価値の複数指標に対して一貫して有意な正の係数を示しており、ダイバーシティの推進が企業価値向上に寄与する可能性が示唆された。
一方、GHG排出量(温室効果ガス)の増加は、PBRや時価総額への負の影響が確認され、環境負荷の高さが企業の評価にマイナスとなる傾向も浮かび上がった。
本報告書は、ESG投資の有効性を裏付けるエビデンスとして、投資家や企業の意思決定に資する知見を提供している。