GPIF、2022年度ESG活動報告を公表

8月25日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、「2022年度 ESG活動報告」を刊行した。同年度のESGに関する取組みの紹介やポートフォリオのESG評価などに加え、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言を受けた分析において、新たに「ボトムアップアプローチに基づくGHG削減貢献量分析」や「GPIFが投資しているESG債の対象プロジェクトのインパクト計測」などを実施した。また、試行的に「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」提言に沿った分析も行った。

GPIFが選定している8つのESG株式インデックスの運用資産総額は2023年3月末時点で約12.5兆円で、昨年から約4,000億円の増加を記録した。国内株式ポートフォリオに占めるESG株式インデックス型の割合は約14%、海外株式ポートフォリオでは約12%を占める。債券ではサステナブルボンド(ESG債)への投資額は1.9兆円。エンゲージメント型も含めると、GPIFのESG投資運用資産は運用資産全体と同じ200.1兆円となる。

累積運用パフォーマンスでは、国内株式は、FTSE BlossomSRと Morningstar GenDiJではベンチマークを上回ったものの、それ以外は下回った。海外株式は、3インデックスとも全て上回った。GPIFは、ESG投資における超過収益を獲得するため、今後もESG投資手法の改善を行っていくとした。

ESG評価機関に対するエンゲージメントでは、金融庁の「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」への賛同や遵守状況についてモニタリングしていく。企業からのフィードバック内容を踏まえ、ESG評価機関に運営改善のためのエンゲージメントも実施した。

気候変動開示でのGPIFポートフォリオ全体での気温上昇ポテンシャルは、国内株式2.5℃、国内債券2.5℃、外国株式2.6℃、外国債券2.6℃。内訳では、2℃目標と整合しない企業が、いずれも3割を超えている結果となった。

また、S&Pトゥルーコストのデータを活用し、投資カーボンフットプリントの分析も行っており、投資先企業のスコープ3までを含めた算定を実施している。GPIFの株式ポートフォリオは各ベンチマークに比べ、カーボンフットプリント抑制が検証された。一方、スコープ1と2の前年比では、排出量の多い企業へのポートフォリオ比率が増えたことにより、国内株式では2万t増加し0.07%増加。企業自身の排出量増加により、海外株式でも91万t増だった。

国債については、気候バリュー・アット・リスク(CVaR)の手法による分析を実施。イールド・カーブ・ショックの大きさが同じであれば、デュレーションが長い国債であるほど、CVaRのマイナスインパクトが大きくなる傾向にあるとした。

本報告では、国連環境計画(UNEP)とS&Pグローバルが策定した評価手法「ネイチャー・リスク・プロファイル」を基に、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づくトライアル分析もS&Pグローバルに依頼。自然への依存が大きいと判断される企業の割合が65%と大きいことが検証された。

【参照ページ】
「2022年度 ESG活動報告」を刊行しました

関連記事

“セミナーへのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2024-11-29

    ISO、ESG分野の国際ガイダンス「ISO ESG Implementation Principles」を発表

    11月14日、ISO(国際標準化機構)はCOP29で、ESG分野における複雑な課題への対応を支援す…
  2. COP29で何が決まった?カーボンクレジットや途上国支援の基金についてポイント解説

    2024-11-28

    COP29で何が決まった?カーボンクレジットや途上国支援の基金についてポイント解説

    気候変動への対応は、企業にとって避けられない課題である。特にカーボンクレジット市場や途上国支援に関…
  3. 2024-11-25

    <発表>お役立ち資料ダウンロードランキング2024

    いつもESG Journal Japanをご覧いただきましてありがとうございます。今年までに最もダ…

““登録03へのリンク"

ページ上部へ戻る