5月10日、日本製鉄は、九州製鉄所八幡地区および瀬戸内製鉄所広畑地区を候補地とした高炉プロセスから電炉プロセスへの転換について本格検討を開始すると発表した。いずれも同社の高級鋼の量産拠点であり、高級鋼のカーボンニュートラル化にいち早く取り組む姿勢を見せた。
日本製鉄は、2021年3月に公表した「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン 2050」において、「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」「大型電炉での高級鋼製造」の 3 つの超革新的技術を用いたカーボンニュートラルの実現を目指している。
このうち、「高炉水素還元」については、2022年5月より東日本製鉄所君津地区において試験高炉への高温水素吹込み試験を開始している。また東日本製鉄所君津地区においては、稼働中の大型高炉実機を用いた、実証試験を 2026年1月より開始する予定。
「水素による還元鉄製造」については、技術開発本部波崎研究開発センター(茨城県神栖市)に、小型シャフト炉を設置し、水素で低品位鉄鉱石を還元する試験を2025年度より開始する。
「大型電炉での高級鋼製造」については、瀬戸内製鉄所広畑地区に新設した電炉による商業運転を2022年10月より開始し、世界初となる電炉一貫でのハイグレード電磁鋼板の製造・供給を可能とした。また、技術開発本部波崎研究開発センター(茨城県神栖市)に、小型電気炉を設置し、2024年度から試験を開始する。
日本製鉄は、政府の『GX実現に向けた基本方針』の考え方に沿い、2050年のカーボンニュートラルに向けて3つの超革新技術の技術開発および実機化を進めている。その中で、同社の2030年の脱炭素目標を確実に達成し、政府の温室効果ガス 46%削減の目標に貢献するためには、一部製鉄所について、高炉プロセスから電炉プロセスへの早期の転換が必要と判断し、九州鉄所八幡地区および瀬戸内製鉄所広畑地区を候補地として本格検討を開始した。
同社は、高炉プロセスから電炉プロセスへの転換は大規模な CO2 削減効果がある一方で、多額の設備投資費用が必要であることに加え、原料、電力をはじめとする操業コストの上昇により、生産コストの大幅な増大が想定されると述べ、 現在国において検討されている政策支援策の早期整備およびカーボンニュートラル鋼材に対する社会的理解の浸透を強く要望した。