日本政府、再エネ導入アクションプランと水素基本戦略を策定

4月4日、日本政府は再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(第3回)を開催した。「GX実現に向けた基本方針」を踏まえた再生可能エネルギーの導入拡大に向けた関係府省庁連携アクションプランの策定とともに、水素基本戦略の改訂方針を示した。

今回の会合では、2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」に基づき、再生可能エネルギーの導入促進に向けた取組を具体化し強力に進めるため、関係府省庁が協力して対応する施策について取りまとめた。

【関連記事】日本政府、「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定

再エネ導入に向けた環境整備

(1) イノベーションの加速
再生可能エネルギーの技術自給率向上に向け、より強靭なエネルギー供給構造を実現していくためには、次世代太陽電池であるペロブスカイト太陽電池や、浮体式洋上風力等における技術の開発・実装を進めていく必要がある。同時に、再生可能エネルギーの電力需給調整を担う次世代蓄電池やスマートエネルギーマネジメント
システムの技術開発も進めていく必要がある。また、こうした再生可能エネルギーに関する次世代技術について、量産体制及び強靭なサプライチェーン構築の早期実現を目指す。

(2) 次世代ネットワークの構築/調整力の確保
再生可能エネルギーの大量導入とレジリエンス強化に向けて、地域間の電力融通を円滑化する連系線の整備を加速することが重要である。そのため、全国大の送電ネットワークの将来的な絵姿を示す「マスタープラン」に基づき、全国規模での系統整備や、北海道と本州をつなぐ海底直流送電の整備を早急に進める必要がある。
また、再生可能エネルギーの普及拡大を進めながら、電力の安定供給を確保するためには、電力の需給を一致させるための調整力が必要であり、特に蓄電池の導入拡大が重要となる。

(3) 需要側による取組
再生可能エネルギーの導入拡大に当たっては、供給側の取組強化のみならず、住宅・建築物や工場など需要側における太陽光発電設備等の導入拡大が重要である。
また、変動型の再生可能エネルギーの導入拡大に伴いエネルギーの需給調整に資するディマンドリスポンス(DR)について、大規模需要家に取組を促していくことが重要である。

再エネの推進と規律の両立

(1) 地域と共生した再エネの導入拡大
再生可能エネルギーは、FIT 制度の導入後、震災前の約10%から、2021年度には約20%まで拡大してきた。
一方で、2030年度には、現行の倍程度に相当する 36~38%という野心的な目標を掲げており、地域と共生しながら更なる導入を拡大していく必要がある。

(2) 適切な事業規律の確保
再生可能エネルギーの導入にあたっては、安全面、防災面、景観・環境への影響など地域の懸念が顕在化している。そのため、こうした地域の課題にも適切に対応し、地域と共生した再生可能エネルギーの導入を進めることが大前提であり、適切な事業規律の確保が重要となる。

(3) 「福島新エネ社会構想」に基づく再エネ等の導入拡大
エネルギー分野から福島復興の後押しを一層強化していくため、官民一体の「福島新エネ社会構想実現会議」を設置し、福島県全体を未来の新エネ社会を先取りするモデルの創出拠点とすることを目指す「福島新エネ社会構想」が策定された。
また、2021年2月には、本構想の第 2 フェーズ(2021~2030 年度)を迎えるに当たり、「2050年カーボンニュートラルの実現」という新たな目標を踏まえ、「再生可能エネルギー」、「水素」を柱として、これまでの「導入拡大」に加え「社会実装」のフェーズにすることを目指す改定が行われた。
引き続き、本構想に基づき、関係府省庁が連携して取組を推進していくことが重要である。

また、水素基本戦略の改訂では、アンモニア等を含めた形で5月末を目途にとりまとめ、制度設計の具体化を図る。主なポイントは以下である。

① 2040年における水素等の野心的な導入量目標を新たに設定し、水素社会の実現を加速化
② 2030年の国内外における日本企業関連の水素電解装置の導入目標を設定し、水素生産基盤を確立
③ 大規模かつ強靭なサプライチェーン構築、拠点形成に向けた支援制度を整備
④ 「クリーン水素」の世界基準を日本がリードして策定し、クリーン水素への移行を明確化

【参照ページ】
再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(第3回)議事次第

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