6月7日、経産省は「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)」を閣議決定した。
今回のエネルギー白書では、福島復興の進捗とカーボンニュートラル実現に向けた課題と対応、エネルギーを巡る不確実性への対応が記述された。最も特徴的なのは新型コロナウイルス感染症がエネルギー需給に与えた影響と世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略だ。
白書の中では、新型コロナは経済活動を収縮させることを通じ、2020年には産業分野、運輸分野を中心にエネルギー消費を減少させた一方、家庭分野ではエネルギー消費が増加する等、分野や地域によって異なるエネルギー消費の変化を生じさせたと述べている。エネルギーをとりまく不確実性はますます高まっているため、省エネの更なる強化や、エネルギー源と調達先の一層の多様化・分散化等により、エネルギー需給構造を質と量の両面で強靱化していく必要があるという。
欧州は、カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギーの大量導入に対応するための調整電源として、天然ガスをスポット契約で輸入しており、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー市場価格の高騰時に国民生活に多大な影響を及ぼすという。これに対して、「エネルギー政策の大原則であるS+3Eの1つであるエネルギー安定供給について、化石資源開発から消費者へのエネルギー供給までのバリューチェーンを最適化していく必要がある」としている。
日本においては、今後ロシアのウクライナ侵略が長引いてエネルギー価格が高止まりしたり、脱炭素に向けた取組を進めるための新規投資等を拡大させていくと、価格・量の両面からエネルギーコストが上昇していくことが予想される。政府は「日本経済全体としては、エネルギー源の多角化や調達先の多様化等を通じてエネルギーの輸入価格を抑えながら、エネルギー生産性を向上させることを第一として、それでも補いきれない場合には、企業・消費者の間でエネルギー価格の上昇をどのように負担するのか、議論を深めていくことが重要」と述べている。