
8月8日、米国の複数の州司法長官は、国際的な気候変動対策組織「Science Based Targets Initiative(SBTi)」が公表した金融機関向けの新基準について、連名で懸念を表明した。司法長官らはSBTiの「金融機関向けネットゼロ基準」が、連邦・州法で禁じられているカルテルや不当な取引制限に該当する恐れがあると指摘している。
SBTiは7月22日に新たな基準を発表。金融機関や保険会社に対し、化石燃料産業への新規投融資や保険引き受けを段階的に停止し、2050年までに排出量を実質ゼロにする方針を打ち出した。すでに世界6大陸で約135の金融機関が基準に沿った目標設定を行うことを表明している。
司法長官らは書簡の中で、企業が協調して特定産業への資金提供を停止することは、競争制限的な「協調的ボイコット」にあたる可能性があると主張。また、達成困難な排出削減目標を掲げることは「グリーンウォッシング」に該当し、州の消費者保護法違反につながりかねないと指摘した。
さらに、一部の州ではすでに「反ESG法」を制定しており、化石燃料産業を排除する企業との契約を禁止している。テキサス州では、SBTiや類似の国際連合関連団体と関わる企業の州契約が制限される可能性があるほか、18州以上で同様の法律が施行されているという。
司法長官らはSBTiに対し、基準策定の過程でのやり取りや、資金源、加盟団体との関係性、また保険会社による具体的な取り組み内容などの情報開示を9月8日までに求めている。
今回の動きは、米国内で拡大する「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」を巡る対立の一端を示すものだ。環境保護を重視する国際的潮流に対し、州政府の一部は「経済活動への過度な干渉」や「法令違反の可能性」を理由に強く反発している。
(原文)IOWA DEPARTMENT OF JUSTICE OFFICE OF THE ATTORNEY GENERAL