米エネルギー省、重要鉱物サプライチェーン強化へ10億ドル規模の資金投入を発表

8月13日、米国エネルギー省(DOE)は重要鉱物や素材の国内供給網を強化するため、総額約10億ドル(約1,400億円)にのぼる資金提供の意向を発表した。資金は今後発表される複数の助成プログラムを通じ、採掘、加工、製造、リサイクルといったサプライチェーンの主要段階を対象に投じられる。

同省によれば、この資金はドナルド・トランプ大統領による「アメリカのエネルギー解放に関する大統領令」に基づくもので、エネルギー・国家安全保障・産業競争力の基盤を支える重要鉱物の供給を安定化させる狙いがある。

エネルギー省のクリス・ライト長官は声明で「米国は長らく重要資源を外国に依存してきた。今回の措置は国内処理能力を取り戻し、安定的な供給を確保するための大きな一歩だ」と強調した。

発表された主なプログラム

  • 重要鉱物・素材アクセラレーター事業(最大5,000万ドル)
    レアアース磁石のサプライチェーン、半導体材料として重要なガリウムや窒化ガリウムの精製、リチウムの抽出技術、製造副産物からの資源回収などを対象に、技術成熟と商業化を後押し。
  • 副産物回収パイロット事業(約2億5,000万ドル)
    製鉄・石炭産業など米国内産業施設で、副産物として得られる鉱物の回収を支援。実証段階でのリスク低減を目指す。
  • レアアース要素実証施設(最大1億3,500万ドル)
    鉱山残渣や廃棄物からのレアアース回収を商業化する取り組みを推進。研究機関との連携を必須とし、受給者は50%以上のコストシェアが条件。
  • 電池材料加工・製造・リサイクルプログラム(最大5億ドル)
    リチウムやニッケル、銅、グラファイトなどの電池関連鉱物を対象に、加工・リサイクル・製造拠点の整備を支援。こちらも受給には50%以上の民間負担を求める。
  • 産業排水からの重要鉱物回収(4,000万ドル)
    ARPA-Eの「RECOVER」計画では、産業用排水に含まれる鉱物資源を抽出。従来の鉱山開発を補完する新たな供給源として期待される。

今回の資金投入は、対中依存度が高いレアアースをはじめとした重要鉱物の安定供給を狙った戦略の一環だ。今後、各プログラムに基づく公募(NOFO=資金提供応募通知)が順次発表され、秋以降に提案の募集が始まる見通しだ。

(原文)Energy Department Announces Actions to Secure American Critical Minerals and Materials Supply Chain
(日本語参考訳)エネルギー省、米国の重要な鉱物・材料サプライチェーンの安全確保に向けた措置を発表

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