【2026年経営戦略としてのサステナビリティ】データ活用はどこまで進んでいるか

サステナビリティは、企業にとって「対応すべきテーマ」から「経営戦略そのもの」へと徐々に位置づけを変えつつある。気候変動やサプライチェーン、人権といったサステナビリティ課題は、個別部門だけの取り組みにとどまらず、事業の持続性や競争力を左右する要素として扱われ始めている。
一方でサステナビリティ/ESGデータを「経営判断にどのように結びつければいいのか」明確な答えを持てている企業は多くない。本稿では、世界の経営層の意識調査や先進企業の事例を手がかりに、サステナビリティ/ESGデータがどのように経営戦略へ組み込まれつつあるのかを整理する。特に、サプライチェーンや人事評価制度といった実務領域においてデータが果たしている役割についても説明する。
|国際交渉の停滞と企業対応の加速
昨年のCOP30は、国際的な気候目標をめぐる合意形成の難しさを改めて示した。一方で、この停滞をそのまま企業活動の停滞と受け止める企業は少ない。再生可能エネルギーへの移行やサステナビリティ情報の標準化、サプライチェーン全体での排出量・人権リスク管理など、民間セクターの現場では意思決定のスピードがむしろ加速していると言えるだろう。
政府間交渉という同質性と合意形成を前提としたプロセスと、競争と選択の中で動く企業活動との間で温度差は年々広がっている。
この変化は経営層の意識調査にも明確に表れている。UNグローバル・コンパクトとアクセンチュアが公表した調査「The 2025 UN Global Compact–Accenture CEO Study」では、88%のCEOが「5年前と比べてサステナビリティのビジネス価値は高まっている」と回答し、99%が「測定可能なビジネス価値を生む施策を優先しながら、サステナビリティへのコミットメントを維持または強化する」と答えている。
企業のサステナビリティは、報告書の評価やスコア獲得を目的とする段階を超え、事業変革やサプライチェーン再構築と直結するテーマへと移行しつつある。
|企業戦略とサステナビリティ/ESGデータ
実務の現場では、サステナビリティ/ESGデータを収集し、開示対応を中心とした“守り”の業務にとどまりがちな場合が多い。しかし、「守りのサステナビリティ」から、ビジネス価値と機会を生み出す「攻めのサステナビリティ」へ移行するために不可欠なのが、サプライチェーンを含む信頼できるサステナビリティ/ESGデータとその経営への統合である。
サステナビリティ/ESGデータを経営判断に活用するとは、単に数値を把握することではない。重要なのは、その数値が何を示し、意思決定に耐えうるのかを説明できる状態にあるかどうかである。例えば、排出量や人権リスクに関するデータであれば、現在の水準が示す意味、上限や下限に近づいた場合に事業へどのような影響が及ぶのか、そしてその数値がどのような前提や算定方法に基づいているのかが整理されていなければ、経営判断への活用は難しい。
つまり、サステナビリティ/ESGデータの経営活用とは、「数値そのもの」ではなく、「数値の背景や根拠、変動した場合の含意までを含めて共有できる状態」をつくることでもある。このような状態ではじめて、データは報告の対象から、意思決定を支える材料へと変わっていくだろう。
では、具体的にどのようにサステナビリティ/ESGデータを経営判断へと組み込み始めているのだろうか。次に活用例を説明していく。
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執筆者紹介
![]() | マルティネス リリアナ (スペシャリストライター) サステナビリティ学修士。シンクタンクにて海洋・大気環境に関する政策の策定支援を行う。国際海事機関(IMO)ではTechnical Advisorとして国際議論への参加経験を積み、その後、気候変動課題を中心に企業向けにコンサルティングを行う。非財務情報開示フレームワークからサステナビリティの国際動向まで幅広くコラムやホワイトペーパーで解説。 |


