
7月2日、欧州連合(EU)の欧州委員会は、2040年までに温室効果ガスの純排出量を1990年比で90%削減するという新たな気候目標案を、欧州気候法の改正案として発表した。2050年までの気候中立(脱炭素経済)達成に向けた中間目標であり、投資家への予見可能性を高め、産業競争力とエネルギー安全保障を強化することが狙い。
今回の目標案は、すでに法制化されている「2030年までに55%削減」という現行目標の達成が順調に進んでいることを受け、さらに先の道筋を示すものだ。フォンデアライエン欧州委員長は「目標は明確で、その道のりは現実的かつ実践的だ。欧州市民が気候変動の影響を実感する中で、我々の行動に期待している」と述べ、目標達成への自信と意義を強調した。
目標達成の手法として、従来よりも現実的で柔軟なアプローチを重視しているのが特徴だ。具体的には、ある加盟国が目標達成に苦しむ土地利用部門の排出量を、運輸部門など他の分野での削減努力で補うといった部門間の柔軟性を認める。また、質の高い国際的なクレジットの限定的な利用や、EU排出量取引制度(ETS)内での恒久的なCO2除去技術の活用なども検討する。
この目標は、EUの産業競争力を確保するための「クリーン産業ディール」とも連携している。クリーン技術への投資を促すための国家補助や税制優遇措置、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化といった具体的な支援策も同時に進め、脱炭素と経済成長の両立を目指す。
最新の世論調査(ユーロバロメーター)でも、市民の多くがEUの気候変動対策を支持しており、今回の野心的な目標設定への追い風となっている。
提案は今後、欧州議会と理事会で審議され、正式な採択を目指す。採択されれば、来年の国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を前に、世界の気候変動対策を主導するEUの姿勢を改めて示すことになる。
(原文)EU’s Climate Law presents a new way to get to 2040
(日本語参考訳)EUの気候法は2040年までの新たな道を提示