
4月、国土交通省港湾局は「港湾の施設の技術上の基準」を改正し、気候変動の影響を考慮した港湾施設の設計に関する実務的指針として「気候変動に対応した港湾の施設の設計事例集」を公表した。この事例集は、防波堤、岸壁、護岸といった港湾の基本的な施設を対象に、将来予測される平均海面水位の上昇や波高の増加といった外力を考慮した設計手法を具体的に示している。
近年、高波や高潮などの気候変動に起因する自然災害が激甚化・頻発化しており、港湾施設の持続的かつ安全な機能維持が求められている。この事例集では、設計条件の設定方法、気候変動適応策の立案手法、作用の組み合わせの考え方、将来シナリオの設定方法などが丁寧に解説されている。例えば、設計対象となる潮位や波の将来変化量については、1995年を基準年とし、設計共用期間の終期として2090年を想定した手法が採用されている。
具体的な設計事例としては、高波に対する既設防波堤の改良事例、上部工の嵩上げに適応的適応策を導入した岸壁の設計、既設護岸の嵩上げと差筋による上部工の一体化を行った補強事例が紹介されている。これらの事例は、実務者が具体的な設計に着手する際の参考資料として有用であり、設計実務の円滑化と適切な気候変動適応の推進が期待されている。
今後、国土交通省は新たな設計事例や補強に関する情報を収集し、事例集の更新を行う予定である。最新の事例集は、国土交通省港湾局のホームページから入手可能である。この取り組みは、気候変動という地球規模の課題に対し、港湾インフラの強靭化と将来世代への備えを具現化する重要な一歩といえる。