【ESG 企業分析⑨】海外M&Aで安定的な成長とダイバーシティを実現!東京海上ホールディングスのESG経営

本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。

第9弾として、本日は東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上HD)の直近のESGに関する取り組みと統合報告書やESG説明会でのIR開示内容を解説したいと思います。

東京海上HDについて

損害保険、海外保険、生命保険等を展開する企業群を傘下に持つ持株会社。東京海上日動が主体。海外保険事業ではM&Aを実施しバランスのとれた成長戦略を推進

出所:SPEEDA

CSR/ESGにおける対外的評価

優れた統合報告書(GPIF調査):4運用機関が選定

・第一章「パーパスストーリー」の記述が秀逸。会社の存在意義、強み、これから目指す姿について、シンプルながら明快にまとめられており、持続的成長への期待が高まる内容
・冒頭、Q&A 形式で M&A の実績など同社の強みを説明するなど、同社のメッセージがクリアに伝わる紙面構成となっている。また、各社外役員の活動状況や従業員サーベイの結果開示など投資家が欲しい情報を提供しようとする姿勢が評価できる。
・同社の事業戦略・グローバル経営にパーパスが果たしている役割がわかるよい統合報告書。トップメッセージも社外取締役の対談も非常に有益な内容

出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」GPIF(2021/2/24)

GPIFの運用機関からも高い評価を受けている東京海上HDは、ESGに関してどのような開示をしているのでしょうか。次章以降は評価されている項目を具体的に見ていきたいと思います。

秀逸なパーパス(存在意義)ストーリー

東京海上の統合報告書は2ページ目からいきなり目を奪われます。見開きQ&Aという斬新なデザインで東京海上HDの存在意義・強みを中心とするメッセージがクリアに伝わる紙面構成となっています。

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出所:統合レポート2020(P.2〜4)

M&Aのトラック・レコードとESGにおけるSocial面での強み

東京海上HDはM&Aのトラック・レコードを、統合報告書上で大きくアピールしています。M&Aを通じてリスクをグローバルに分散し、買収先をグループ入り後も堅調に成長させている点は、他の上場会社の開示では殆ど見られない独自の強みとして、投資家から高い評価を受けています。

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また海外M&Aを通じて獲得した優秀なグローバル人材を適材適所に配置し、ダイバーシティ等も積極的に推し進めている点はESGの観点からも非常にポイントが高いと言えます。後述しますが、年々従業員数に占める海外従業員割合は増えており、2019年度時点で約40%に達しようとしています。

豊富な非財務情報開示

非財務情報の開示面はどうでしょうか。東京海上HDのユニークな点は、非財務ハイライトとして海外従業員比率従業員サーベイ、社外取締役の活動状況等が可視化されている点です。

これらの情報は投資家が知りたいと思っているものの、情報が散らばっていたり開示されていないケースも多く、この点においても投資家が必要な情報を分かりやすく提供している、という点で高い評価を受けています。

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出所:統合レポート2020(P.33)

社外取締役の対談

東京海上HDは統合報告書上で「社外取締役の対談」を全4ページにわたって載せています。単なるガバナンス上の取り組みを記載するだけではなく、取締役会での社外取締役・監査役の関与度合いを対談という形で載せることによって、彼らの果たしている役割がより明確に伝わってきます。

ESGのガバナンスに関しては各社似たような取り組み・開示をしている企業が多く違いを見つけ出すのが難しいのですが、東京海上HDのオリジナリティのある開示は非常に参考になりそうです。

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出所:統合レポート2020(P.72)

最後に

東京海上HDのESGに関する取り組みはいかがでしたでしょうか。多くの海外M&Aを成功させ、ダイバーシティの強化といったESGを推し進める東京海上のようなグローバル企業が今後日本からも多く出てほしいと感じています。

また東京海上HD以外にも多くの企業の事例を取り上げていますので、お時間ある方は是非こちらからご覧ください!前回は日立について取り上げさせていただきました。次回はコニカミノルタです。

【ESG 企業分析⑩】2009年から脱炭素に取り組み!2030年にカーボンマイナスを実現するコニカミノルタのESG経営

【ESG 企業分析⑧】GPIFや環境省から高評価!日立製作所のESGへの取り組み

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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。

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