【ESG 企業分析③】ESG指標と賞与が連動!リコーの徹底したESG取り組み姿勢

リコーのロゴ

本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。

第3弾として、本日は株式会社リコー(以下、リコー)の直近のESGに関する取り組みと実際の開示内容を解説したいと思います。

リコーについて

複合機やプリンターなどのオフィス向けの画像機器を中心に展開。海外展開ではローカルの顧客向けにカスタマイズできるのが強みで世界シェアは首位。産業向け、商用印刷事業など成長分野に注力。

出所:SPEEDA

CSR/ESGにおける対外的評価

ESGファイナンス・アワード・ジャパン(2019):銅賞

また環境省の「ESGファイナンス・アワード・ジャパン(2019)」環境サステイナブル企業部門において銅賞を受賞しており、ESG投資に関する取り組みについて国からも評価を受けています。

優れた統合報告書(GPIF調査):4運用機関が選定

・TCFD フレームワークに基づく開示やダイバーシティに関する開示が豊富になされている。また特集としてコロナ禍における取組が紹介され、危機対応を通じ企業価値拡大を図る同社の戦略が理解できる
・2036 年ビジョン、中期戦略、短期の情報のバランスが良く、デジタルサービス企業への転換を進める同社への理解を深める上で、有益なツールとなっている。また、ESG 情報を含めたディスクローズの一覧が記載されており、統合報告書以外のデータアクセスが容易となる工夫が施されている。
・事業等のリスクと対応策で、成長戦略への影響まで言及している点は他社の参考になる内容。

出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」GPIF(2021/2/24)

環境省やGPIFの運用機関からも高い評価を受けているリコーは、ESGに関してどのような開示をしているのでしょうか。次章以降は評価されている項目を具体的に見ていきたいと思います。

TCFDフレームワークに基づくリスクの特定(E)

リコーはTCFDに賛同するのみならず、TCFDフレームワークを用いて自社拠点を含むサプライチェーンのリスク及び対処策を検討し、2020年の統合報告書より新たに国内外の水害リスクを評価項目に加えています。また今回の新型コロナウイルスの影響を踏まえ、気候変動に伴う感染症のリスクと機会を追加した点も、独自的な試みであると言えます。

画像3

出所:統合報告書2020

新型コロナウイルスへの対応(E)

またTCFDで取り上げた新型コロナウイルスに関しては、統合報告書の中で特集として大きく取り上げており、危機対応を通じ企業価値拡大を図るリコー社の戦略を運用期間は高く評価しています。

画像4

出所:統合報告書2020

ダイバーシティに関する開示(S)

またリコーグループはダイバーシティの開示に関しても、他社対比充実していると受け取られているようです。

グローバルでダイバーシティ&インクルージョンに取り組み、統合報告書内でも約4ページにわたって具体的な施策をまとめるなど、非常に参考にすべきポイントが多いと言えます。

画像1

ESG指標と賞与の連動(G)

またガバナンス面においても、取締役・執行役員の賞与算定式においてESG指標(DJSI)の年次Ratingを組み込んでいます。2020年のIR Dayでは「DJSIは網羅的・多面的な評価であり、フィードバックが細かく改善に結びつけられるため、ESG指標として採用した」と述べています。

多くの企業の開示情報を確認しましたが、ESG指標を賞与に連動させている例は極めて少なく、ガバナンス面においても他社対比抜きん出たESG対応をしていると言えます。

画像5

出所:IR Day 2020

ESG開示の工夫

リコーは統合報告書の各セクションの下部にESG情報のバックデータがリンクされており、統合報告書以外へのデータアクセスが容易となる工夫がされています。

例えば以下のような非財務情報の、バックデータやこれまでの実績を知りたい場合は、Page下部の「詳しくはWEB」以下の部分をクリックすることで統合報告書外のデータにアクセスすることが可能です。

ESG開示にあたっては、統合報告書だけではなく、サステイナビリティレポートや各種取り組み実施のプレスリリース、ESG非財務バックデータなど参照するデータが多岐にわたるため、今後ESG情報を開示する企業はリコーのような仕組みを盛り込むと、よりステークホルダーが情報を整理しやすくなり、企業のESGへの取り組みに対する評価そのものも上がるのではないでしょうか。

画像2

リコーのESGに関する取り組みと、対外的に評価を受けているポイントをまとめましたが、いかがでしたでしょうか。E・S・G全てにおいて様々な開示への工夫・開示を実施しており、日本の上場企業の中でもトップクラスのESGへの取り組み姿勢をみせているため、他企業も参考にしてみてはいかがでしょうか。

また統合報告書を閲覧したステークホルダーがデータを追いやすいようにするなど、細かいところまで気を配ったESG開示をしている点も高評価です。

次回第4回は味の素のESG開示分析です。お時間がある方は前回の三井化学の記事も是非ご覧ください。

【ESG 企業分析④】遂にESGを事業戦略に組み入れ!2030年に向けた味の素のESG経営とは

【ESG 企業分析②】ESGの独自KPI設定といったらこの企業!三井化学とESG

よろしくお願いします!

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日本最大級のESGメディアであるESG Journalでは、統合報告書を発行している主な日本企業100社ののESGに関する評価やIndexの組み入れ先、各種データの参照をまとめたESGコンプス(ESG開示に関する企業比較)を無料で提供しています。

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