バイデン政権は、気候変動による金融・経済リスクに対処し、軽減するための政府全体の包括的な戦略を発表した。この報告書「A Roadmap to Build a Climate-Resistant Economy(気候変動に強い経済を構築するためのロードマップ)」では、同政権の指示のもと、連邦政府機関や規制当局が行っている、気候変動戦略の活動への統合、気候変動リスクのより良い把握と開示の開発・推進、サプライチェーンの気候変動への耐性の向上など、幅広い行動が紹介されている。
この戦略では、気候変動リスクの財務的・経済的な影響を測定・分析し、開示する必要性を認識し、これらの分野での実践を改善することに重点を置いている。報告書の主な内容としては、バイデン政権が、気候関連リスクを軽減する分析ツールを規制当局に開発させるためのプロセスを開始したことが挙げられており、今後の金融安定化監視評議会の報告書に詳細が記載される予定だ。
本報告書では、米国証券取引委員会(SEC)が、公開企業による気候変動リスクの開示を義務付けるための提言を進めていることも紹介している。先日、SECのGary Gensler委員長は、年内に報告義務化の提案を行う予定であると述べた。
また今回の報告書では、個人の貯蓄や投資を気候変動リスクから守るために行っている活動についても言及している。これらの取り組みには、先週労働省が提案した新規則により、何兆ドルもの退職金および投資資産を代表するERISA年金基金の運用者のために、ESGおよび気候に関する考慮事項を投資戦略に組み込む際の大きな障壁を取り除くことが含まれている。
また保険業界においても、リスクの高い地域で十分なサービスを受けていない人々が保険に加入できるかどうかを評価するなど、気候変動リスクへの対応が必要であるとしている。
このほか、政府調達に関するアクションとして、連邦政府機関にサプライヤーのGHG排出量プロファイルを考慮し、より低排出量のサプライヤーを優先的に採用することを義務付ける新ルールの導入や、契約時の気候情報開示の改善などが挙げられている。
また連邦政府は、来年の2023年大統領予算に、連邦政府の気候変動リスクへの対応と長期予算見通しへの影響についての評価を盛り込むとしている。