
6月26日、シンガポールビジネス連盟(SBF)はシンガポール証券取引所規制部門(SGX RegCo)と共同で実施した中小上場企業(ListCo)へのヒアリング結果を踏まえ、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)に準拠した気候関連開示の義務化について、2025年1月に開始予定の適用時期を1~2年延長するよう提言を行ったと発表した。対象となる中小企業の84%が準備を進めているものの、自信をもって開示できると回答した企業はわずか4%にとどまり、報告基準の理解不足やリソース不足が主要な課題として浮上している。
SBFは中小・中堅企業における対応力強化のため、以下の4つの具体策を提案している。①中小ListCoに対する期限延長、②リソースに見合った開示要求の設計、③シンガポール独自の横断的・業種別ガイダンスの整備、④統一的な気候関連情報のデジタル報告プラットフォームの設置である。ISSBの開示基準は従来のTCFDよりも詳細かつ包括的であり、企業にとっては気候シナリオ分析やリスク評価といった複雑なプロセスが追加負担となっている。
さらに、現在シンガポール政府が提供している「サステナビリティ報告補助金(SRG)」は、義務化前の報告書作成にのみ適用されるため、期限延長が行われれば中小ListCoの補助金活用も可能になる。これにより、海外子会社の対応準備やデータ収集体制の構築、先行する大企業のFY2025開示を参考にした報告精度の向上が期待される。
SBFのCEOコック・ピン・スーンは「本提案はサステナビリティ開示を後退させるものではなく、中小企業が質の高い対応を行うための現実的な措置だ」と述べ、関係省庁や業界団体と連携しながら、企業の能力強化と持続可能な開示文化の定着を目指す方針を強調した。