
4月15日、国際的資産運用会社ロベコは、企業の生物多様性への取り組み状況を評価する新たなツールBiodiversity Traffic Light(生物多様性信号機)を発表した。本ツールは、企業が自然に与える影響や、自然損失の軽減・回復に向けた努力を可視化し、投資家が自然関連リスクと機会を投資判断に取り込むことを可能にする革新的な仕組みである。
ロベコが公開したホワイトペーパーによれば、本ツールの開発は、投資家との対話の中で明らかとなった「自然の損失がポートフォリオ全体に及ぼすシステミック・リスクを理解しながらも、それをどのように測定・管理し、農業や林業以外の市場にどう反映すべきか」という課題に応える形で進められた。
この新ツールの構築には、2024年に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が発表した産業別ガイドラインが活用された。各産業ごとに定義された自然への影響と評価指標に加え、自然保護団体と連携して作成された高精度なデータセットが統合されている。
生物多様性信号機は、企業の現在の自然への影響と、将来的な改善計画の両方に基づいて評価を行う。たとえば、水の使用量や有害廃棄物、非温室効果ガスによる大気汚染といった物理的な影響に加え、再生可能資源の使用や環境負荷の高い商品の収益構造なども対象となる。また、将来のパフォーマンスにおいては、取締役会による監督体制、情報開示、定量的かつ期限を明示した目標設定が重要視される。
企業はこの評価により、「整合(Aligned)」「整合に向けて進行中(Aligning)」「一部整合(Partially aligning)」「不整合(Misaligned)」のいずれかに分類される。「整合」とされた企業は、業界内でも自然への影響が少なく、自然損失を反転させるための行動を示しているとされる。
ロベコはこのツールが、ポートフォリオ構築においても幅広く活用可能であると強調する。たとえば、環境配慮が進んだ企業への積極投資(ポジティブ・スクリーニング)、自然破壊に関与する企業の除外(ネガティブ・スクリーニング)、ポートフォリオ全体の比重調整、さらには企業とのエンゲージメント戦略への応用が可能である。
さらに、ロベコはこの評価手法を自社の運用する「Biodiversity Equities」戦略にも組み込んでおり、環境負荷の高い産業において持続可能な変革を進める企業や、自然再生を促す技術・サービスを提供する企業への投資を進めている。ポートフォリオの大半が「整合」あるいは「整合に向けて進行中」と評価された企業で構成されており、長期的な成長と自然資本の回復を両立させることを目指している。
自然環境の損失が経済の安定性に直結する時代において、ロベコの「生物多様性信号機」は、投資家が果たすべき新たな責任と可能性を示す試金石となるだろう。
(原文)Measuring nature with the Robeco Biodiversity Traffic Light
(日本語参考訳)Robeco生物多様性トラフィックライトで自然を測る