
4月、モーニングスターが発表した最新レポートによれば、2025年第1四半期の世界のESG(環境・社会・ガバナンス)投資ファンドは、過去最大となる86億ドルの純流出を記録し、前年第4四半期の181億ドルの純流入から大きく転換した。地政学的な変化やESG投資への反発の高まり、特に米国における政策後退が主因とされる。
米国ではドナルド・トランプ前大統領の再登場により、気候変動対策や社会的多様性(DEI)への取り組みが政治的争点となり、ESG投資に対する法的リスクが増大。これにより米国のESGファンドは10四半期連続の資金流出を記録し、今期は61億ドルが流出した。
一方、ESG投資の中心である欧州でも12億ドルの流出があり、2018年以来初めてマイナスに転じた。アジア太平洋地域では、日本を除くアジアで約9.2億ドル、日本で9億ドルの流出が見られた。対照的に、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドではそれぞれ約3億ドルの資金流入があった。
このような資金動向の変化に加え、ファンドのリブランドも顕著である。欧州ではESG関連用語を名称から削除するなどの再編が335件行われ、そのうち116件がESG関連の文言を外した。新規ESGファンドの立ち上げも鈍化しており、前四半期の105件から54件に半減した。
ただし、ESGファンドの総資産は依然として3兆1,600億ドルに達しており、欧州がその84%を占めている。また、持続可能な債券ファンドは140億ドルの純流入を記録し、ESG投資の中でも相対的に安定した動きを見せている。ESG投資は、政治や市場環境の影響を受けながらも、長期的な成長可能性と社会的意義を有しており、特に欧州を中心とした透明性向上や規制強化の動きが、今後の信頼回復の鍵を握ると考えられる。